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戦うためのカルボナーラ

ロンドン旅ご飯記録最終回です!
前回記事はこちらから、よろしければぜひお楽しみください◎

そして旅日記も含めたこれまでの日々はこちらからご覧ください。(…ご飯以外日記3〜5日目ものんびり書いてゆきます😉)

日本に帰って来た日は2/5だった。この日のことを覚えていらっしゃる方も多いと思うが、数年ぶりにどかどかと雪の降った日である。

前日から遅れるかもしれないし最悪欠航かも…と航空会社さんから連絡が何度かあったロンドンを19時に発つ便の飛行機は、それでも無事に就航するとのことで私たちは空港でソワソワしながらその時を待った。

免税店もそこそこにお土産屋さんを冷やかして(余談だが、イギリスはEU離脱後免税が効くのは空港くらいだったこと、有名どころのお土産は空港でそれなりに手に入ったことから次回以降もし行く機会があったらお土産は空港で買おうと決めた)、静かな通路をしばらく歩いて搭乗口に向かった。

静かな空港というものはなんだか不思議で、良くも悪くもあまり現実味がないなと思う。慌ただしく人が行き交っていろんな音がする場所というイメージが強いだけに、暗くてしんと静まり返った空の港は、現実というよりSFに出て来そうな風景だった。

飛行機ではAirPodsとアイマスクのおかげでめちゃくちゃ眠り、スッキリした頭で英国王のスピーチを見てじんわり感動し、行きと同じく機内では水分だけ摂取した。
いよいよ日本が近いとなったとき、急に機体が揺れた。雪をもたらす雲のせいで気流が乱れているのである。今思うとなかなかの揺れで、大小様々のうねりに体が揺られた。飛行機前方と下方(想像したら可愛かったので"飛行機のおなかの部分"と呼んでいた)にカメラがあるのだが、飛び交う雪は空中を猛スピードで横切るとこんな風に見えるのかという発見があった。機内のアナウンスで何度も「揺れますが大丈夫です、安心してください」という趣旨の呼びかけをしてくださったが、着陸までずっと、なんだかそれが本当に心強かった。

普段空港から地元駅までは直通のバスを愛用しているのだが、到着してすぐ終日運休の知らせを受けた。致し方なし、路面は滑るし渋滞もするだろう。むしろこういう時にすべきは日頃の感謝である…と思いつつも、やはりいつもと違う遠回りで帰る覚悟は必要だった。その行程もきっと、普段よりゆっくり進むことだろう。安全運転万歳、交通機関の皆様本当にありがとうございます。

遥かなる家路を目指す私たちが取った行動はひとつ。ごはんを、食べる、である!(大声)

海外旅行に出ると普段は意識しない自分の民族性に気付かされることが時々あるが、このときの私は「腹が減っては戦はできぬ」とかつて宣うた遠い御先祖の存在を自らの内に感じざるを得なかった。お腹がすいているので戦う前に食べるのだ、という熱意や闘志に似た気持ちがフクフクと湧き上がってきて、我ながら頼もしかった。

そして笑ってしまった。羽田のレストランはどこもかしこも満席だったのである。みんな同じサムライスピリットを持ちし者たち…無事で帰られたし。さてどうしよう。

唯一席が空いていそうだったのはタリーズさんで、普段は飲み物でしかお世話になることがなかったが確か軽食があるかもじゃんと思い照準を定めた。すると、なんとも美味しそうなパスタセットがあるではないか!無類の麺好きの夫とふたり、各々にパスタセットを注文した。夫はボロネーゼ、私はカルボナーラ。帰国早々紅白でめでたいぞ!ガハハ!

そしておよそ20時間ぶりに口にした食べ物なこともあり、カルボナーラは恍惚するほど美味しかった。まったりとしたソースに麺がよく絡み、ベーコンの風味と粒胡椒の香りが時々アクセントとして現れる。カルボナーラは元々大好きなお味付けだが、この日のは絶妙かつ別格に感じられた。特徴的な具材や工夫とかはない、ザ・カルボナーラ!という感じのお味付けが染み渡って仕方なかった。塩気のあるクリームソースってこんなに美味いん?としみじみ思いながら体力をチャージした。ありがとうタリーズさん、私たちこれで戦える…!

しかしだ。そんな覚悟で大荷物を携えながら乗ったモノレールはなんか快速だったのかすごく早く着き、その後の電車も遅れは少なく人もさほど多くなく、誇張なしに予想の10倍普通に家に帰れた。日本すごいな…交通機関はできるだけスムーズだし、カルボナーラはあんなに美味しくてドリンクもついて2000円しないし、えっ暮らしやす…と改めて感じざるを得なかった。

ロンドンの素晴らしさと日本の素晴らしさは全く違うかもしれないが、プロ意識と真心と志の創り上げたものたちがあらゆる顧客を幸せにするものだなとつくづく思わされる旅路だった。思いつきで行って本当によかったし、無事に帰れて本当によかった。
たくさんの真心とプロフェッショナルの皆様たちに、行ってらっしゃいとお帰りなさいを言っていただいたような気持ちになった雪の夜だった。

カルボナーラ、大好き。

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