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気配としての海、記号でしかなかった青のり

幸いなことに有給をぶち込んで10連休を錬成することに大成功し、のー…………んびりとした日々を満喫した。

遠出こそしなかったが、逆にここぞとばかりに近所で気になっていたお店たちでご飯を食べた。ありがたいことに生活圏に和洋中どころか南インド、モロッコ、台湾、韓国、オーストラリア、ギリシャなどあらゆる地域のごはんを供してくださるお店があり、新しい味に出会っては食卓旅行も良いものだと思って嬉しくなった日々だった。色んなおいしいものをいただいて、住む街がますます好きになった。

ただ、食べた瞬間に衝撃…となったのはあまりにも身近な食材であった。

青のりである。

和食のお店を訪ねた際、前菜のお皿の端にちょん、とだし巻き卵が置いてあった。そのだし巻き卵というのが青のりが入っていて、なんだか見慣れない見た目をしていたのだが…
一口いただいて、思わず目を見開いてしまった。あまりにも、美味しすぎた、のである!!
(どんな強調)

青のりが入っているおかげで…ただでさえ美味しいだし巻き卵に磯の香りの味わいが足される。その磯の香りというのが何とも爽やかで、海の気配というか、潮風まで感じるくらい清々しく香り高いのだ。その海は時に荒くも豊かな生命を讃え波打つ。共にする卵の風味まで際立って、本当に美味しい。もはや海藻の粉とだけ表現するには勿体無いほどの味わい。食ってみな飛ぶぞである。具体的には生命感溢れる海のそばに、心が飛べる。

青のりこんなすごいのか…と感心してしまった。失礼な話で恐縮だが、我が家は青のりをお好み焼きにかける「記号」、つまりお好み焼きをよりお好み焼きたらしめる存在としてのみ扱ってしまっていた。なんなら、歯に青のりというシチュエーションがコミカルな印象を絶対的なものとしすぎているせいもあってか「あっても無くても」「なんなら無くても」的なものだと思ってしまっていたのだ。

しかし一振りでこんなにも豊かさを感じさせてくれるこの青のり。こんなにもポテンシャルを持っていたとは…恐れ入った。

というわけで、連休中の自炊の時は青のりを使いまくった。家の特権、名もなき料理たち。
美味しかった食べ方は、
・炒めた拍子木切りの長芋に卵を半熟程度に絡めて青のりと醤油
・青のりしらすチーズトッピングのグラタン
・卵かけご飯に青のり、にんにく醤油添え
・磯辺揚げ(ちくわ、ささみ)
・冷奴
・じゃがバターに青のり
などなど…

芋や卵、チーズなど、およそ海とはかけ離れているものとあまりにも合うのでもう、もう、めちゃくちゃ感動した。初めて自分の力で進んだ旅路の果てに海を見た感動に近い嬉しささえあった。

こんなに美味しいものを記号としてのみ扱っていたことをちょっぴり悔やんじゃうし、これからはあらゆるステージ(皿)の上で準主役くらい活躍して欲しいと急にワクワクするのはとっても楽しい。

あと、しょっちゅう海には行かずとも、海と、その気配を愛しているんだなと思った。青のりを食べて海を想ったとき、自分でも信じ難いくらい懐かしくて嬉しい気持ちになったから。
来年のゴールデンウィークは海が見れたらいいな。今年は、ゴールデン・青のりウィーク。

青のり、大好き。

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