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北米流BtoB営業の報酬の組み方

はじめに

これなに:
私が住む北米での、テックセールスの役割でよく見る報酬の組み方。
ここで言うテックセールスとは、ソフトウェア会社などでBtoB(法人)営業する人たちのこと。フルタイムの従業員の場合でも、パートタイムの業務委託による契約者の場合も基本的な考え方は同じ。ちなみに、北米のテックセールスには「BDR(business development representative)」と「AE(account executive)」がいて、BDRがアポ獲得から初回商談あたりまで、AEが提案からクロージングまでを行う分担になっていることが多い。

読んで欲しい人:
BtoB営業パーソンの報酬を決める立場にある人

報酬の種類:

よく見られる報酬の種類は以下の6つ。1〜6の中から複数を組み合わせることが可能。

1. ベースサラリー(固定給・時給など)

  • What|成果に関わらず一定期間働いてもらえる報酬。

  • When|特に商材が新しい場合、フルタイムでの雇用の場合は一定のベースが払われることが多い。

  • Example|時給3,000円、年間のベースサラリーが600万円、など。

2. 成果報酬(適性リード数)

  • What|商談に出るなどの営業活動によりうまれた、適性条件を満たす見込み顧客(SQL: Sales Qualified Lead)の数に合わせて変動する成果報酬。

  • When|新規開拓・アポ獲得から行う役割(BDR)に多い報酬の組み方。

  • Example|商談した見込み顧客が、適性条件を満たして次の営業フェーズに進んだら1万円。

3. 成果報酬(提案数)

  • What|作成(企画)を含む、提案数に合わせて変動する成果報酬。

  • When|サービス商材など、カスタマイズ性の高い商材の場合は企画にも時間がかかるため、この方法も有効。

  • Example|1提案あたり1万5,000円。

4. 成果報酬(クロージング数・額)

  • What|自分が提案した案件が受注したらもらえる成果報酬。

  • When|クロージング担当者はこの報酬の割合が大きい、そうでない担当者(アポ獲得と商談担当)は自分のリードが顧客になったら少ない割合でもらうことがある。

  • Example|1クロージングあたり5万円 or 粗利や営利の3.5%。

5. 目標達成後のアクセレレーター(ボーナス)

  • What|月次などで決まっている目標数・額(クオータ)を達成した際や、目標値を超えた際に与えられる追加報酬。

  • When/Why|目標達成した途端やる気をなくすこと(sandbagging)を防ぐため、またトップパフォーマーにより多く報酬を払って優秀な人材をキープするために導入。

  • Example|月次クロージング目標が3件(1クロージングあたり5万円の成果報酬)の場合、同月の4件目からは1クロージングあたり+30%で6万5,000円の成果報酬を支払う。

  • Example 2|半期目標が1,000万円の時、目標達成したらボーナス10万円、さらに1,500万円に達成したら追加ボーナス20万円、など。

6. 顧客の継続に準じた報酬

  • What|受注した顧客が特定の期間解約(Churn)しなかったら発生する報酬。

  • When/Why|不適格な顧客をセールストークに頼って無理やり受注させるのを防ぐため。また、カスタマーサクセスへの情報などの引継ぎを責任を持ってやり遂げる・顧客との関係値を作ることを助長させるために導入。

報酬の組み方:

最初に報酬の組み方の一般的な考え方(有効な例)と注意点をご紹介。その後報酬構築のステップを例と合わせて見ていく。

良い報酬の組み方

1. 組織として営業パーソンに注力して欲しい部分に報酬がいくような仕組みになっている。
報酬の設計と組織の戦略が一致していない例:どんどん新規開拓をして顧客を増やすフェーズなのに、顧客満足度や継続レートによる成果報酬を多く設計している。逆に、顧客の適性とリードの質を向上したい方針なのに、商談数(量>質)のみでの設計になってしまっている、など。

2. 計算がわかりやすい・必要以上に複雑でない作りになっている。
報酬の計算が複雑だと、営業パーソンが「自分が今どの案件・タスクに注力すべきか」が判断できなくなるため効果的でない。

3. 自分でコントロールできる業務スコープ内の報酬が主になっている。
例えばクロージング担当でない営業パーソンの成果報酬を、クロージング額に大きく比例する形で設計してしまうと、クロージングの実力のあるAEにのみリードを渡すようになって組織全体の稼働バランスが悪くなったり、他人のパフォーマンスで自分の報酬が決まることに不満が溜まって離職につながることもある。

その他注意事項

上記「報酬の種類」で紹介したうち、2(適性リード数に応じた成果報酬)と3(提案数に応じた成果報酬)は重複になることが多い。
→ 2で適性リードと判断された見込み顧客へは、ほぼ提案を持っていく流れになるはず。初回商談からクロージングまでを同じ営業パーソンが行う場合は、どちらか片方を選ぶことが多い。分業の場合はBDRが2、AE(account executive)が3をもらうイメージ。

報酬構築のステップ

優秀な人材を確保するために最低限支払いたい金額と、営業チーム全体の目標から総合して報酬を設計するステップがある。

A)まずは以下を設定

  • パフォーマンスに関わらず、最低限渡す金額を設定。(ベースサラリー)

  • 目標達成100%で支払いたい金額を設定。(OTE: On-target Earning)

  • トップパフォーマーに支払う金額を設定。(達成率150%でいくら、200%でいくら、最高いくら、など)

B)次に自社の現実的な以下の数字を把握する

  • 特定の期間(年間、今期など)の売上目標、または粗利目標を設定。

    • Example|例えばチームで今期(上半期)3,000万円の売上が目標で、3人の営業担当者がいた場合、各自の目標を1,100万円にする、など。(※10%多めの個人目標)

  • 各ファネルごとのコンバージョン率を把握。

    • Example|商談から提案につながるコンバージョンが20%, そこからさらにクロージングが25%。

  • 月々の目標値の設定。(月に商談○件、提案○件、クロージング○件、いくらの契約、など)

    • Example|商談20件/月、提案4件/月、受注1件/月が現実的な目標。

    • Example|上記の営業パーソンの上期売り上げ目標が1100万円→185万円/月での受注を目標とする。

C) 上記A,Bを合わせて報酬を設計

  • Example:

    • 最低金額(ベースサラリー)が年間600万円とする。

    • 目標達成率100%で年間約750万円(OTE)に設定したい場合の設計の例:

商談数20件/月、提案数4件/月、上期/下期1100万円ずつクロージングするのを目標とした場合の年間の報酬の組み方の例。トータルが750万円に近くなるように成果報酬を設計。


上記の例と比較して、「目標達成のボーナス」を上/下期ごとに10万円ずつ、さらに提案数よりもクロージング数に重きを置いたパターンでの設計。


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