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あらわになっただけ

今更だが、オードリー若林さんのエッセイを読んだ。

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斜に構えて世の中を見ていた筆者は、社会に揉まれて成長する。反骨の似合う青年期から責任を伴う中年期への過渡や、心身の在り方の変化についての率直な吐露。

書籍内で、「集団セラピーと同じ効能があった」と紹介していた本を読んだ。正確にはまだ読書中。

職場や家族、多様な問題に直面し、大切な人生の転換点を体験する。
最も血気盛んな安定期に見えて、中年ほど心の危機をはらんだ季節はないー 夏目漱石、大江健三郎など、日本文学の名作12編を読み解き、そこに登場する中年の心の深層を探る。我が国を代表する心理療法家による、待望の中年論
(裏表紙より)

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文学作品を例に挙げた、中年期の苦悩や困難についての考察。体力の低下、「創造・構築から維持・下降」へと変わる人生の課題に対して、混乱や惑い、悲哀を感じながら生きることについてなど。

発行は約30年前、明治〜昭和の作品群を扱っているにもかかわらず、本質は全く古びていない。いつの時代も人間の悩みはだいたい似たようなものだ。ジェンダー概念には時代を感じたが。

………

若さが何とかしてくれた偏食や睡眠不足は、中年になるとすぐ病の種となってあらわれる。飲み過ぎれば胃や肝臓が痛むし、まともに寝ないと2日もすれば生ける屍だ。いつ出来たのか分からない痣がいつまで経っても治らない。
心も同じで、青年期には許された未熟や誤魔化しは、歳を重ねると簡単にあらわになる。

若い時から正確・精密に自己を把握し、よく向き合って生きてきたなら、加齢にともなう内的・外的な変化を受け止めることは、さほど難しくはないのかもしれない。
でも人は弱いから、逃げてしまう。そのツケが出始めるのが中年期だ。
河合隼雄の柔和な文章を、私はそう受け止めた。

痛みを伴う読書体験だ。
ページを繰る手を止め、つい考え込んでしまった。私がこれまで逃げてきたことについて。

私は「腹を割る」ことが、他者はおろか自分に対しても出来なかった。端的に言うと、過去及び現状の自分を受け止めきれていなかったのだと思う。
自分に嘘をつき続けることは本当によくない。心身を蝕むし誰も得しない。頭も悪くなる。
分かっていたけど逃げるのは楽で、ずっと誤魔化しながら生きてきた。

ここ数年、ある人との出会いで、ださく愚かしい自分を、少しずつではあるが、受け止められるようになってきた。その人には心から感謝しており、その寛容さを尊敬している。

ただ、それは単なるきっかけに過ぎないのも知っている。クライシスを乗り越えるには、結局自分が頑張るしかないから。
己の幸福は己の手でしか掴めない。

傷や欠落を受容し、そのままの自分を生きること。
外側から見たら何も変わっていないように見えるだろうが、自分にとってはチャレンジだ。

で、何を始めたかと言うと、読書と運動だ。正確には以前より増やしたという感じ。
衰えゆく知力を少しでもアップデートし、体力を高め、愚直に、真摯に生きていきたい。

あと、転職も決まった。新しい環境でも丹念に自分を構築する。

ウォーキングついでの森林浴。土の匂いがマスク越しでも濃厚で、心地よかった。

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