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イラストレーターが【選挙ポスター】を絵解きしてみるー2019参院選(後編)

選挙ポスターには何が書かれてて、何を見せられていたの?を絵解きしてみようという後編。前編もどうぞ。

前編には東京選挙区20候補者の選挙ポスターの情報をまとめなどもあります。
候補者や得票数の情報は「選挙ドットコム」を参照しております。

引き続き「意図」が上手く表現されているか否かを見ているのであって
「意図自体の是非」は今回一切考えておりませんので、あしからず。

2)キャッチコピーと写真が与える印象で当落決まる???

これを考える発端になった山岸氏のポスターを見ていきます。
今回の東京選挙区は、1時近くまで6議席目の当確が出ない接戦でした。

山岸氏はその中で7位となり落選。そこからこんなツイートがあったのです。

2)-1 キャッチコピーには何が書いてあるのでしょう?

まずは山岸氏と当落ラインで接戦を繰り広げたおときた氏、たけみ氏のポスターを解いて行きたいと思います。

写真は除いて、目に入る「情報の順番」を見ていきます。

 おときた氏:名前→政党名→やながせ裕文→2児の父
 たけみ氏 :名前→政策コピー→自民党公認
 山岸氏  :名前→政党名→元朝日新聞記者&37歳→学歴

「政策」に触れているのは、たけみ氏のみでした。
たけみ氏の政策コピーは名前の次に目に入る情報として、優先度高く配置されていました。「選挙」なのでアピールすべきは「政策」で当然です。

確かに山岸氏のポスターは「経歴」おときた氏では「比例区候補名や2児の父」がアピールされています。どちらも候補者の政策じゃないのでどちらがより良いかは正直良くわかりません。
考える発端での話で言えば、なぜ「学歴」をアピールしたかというよりも、
「選挙」なのになぜ「政策」を載せなかったのでしょうか。

次に先に当確していた他4候補のポスターを見てみます。

抽象的な度合いや記載サイズの大小の差はあるものの自分の実現したい政治の姿が、4候補者全員キャッチコピーとして載っています。

 丸川氏:つよく、優しく、かがやく東京
 山口氏:生活者の声 日本の政治の真ん中に
 吉良氏:”ブラック”な働かせ方ゼロに
 塩村氏:まっとうな政治。

具体的な印象が一番強いのが吉良氏です。働き方ではなく「働かせ方」と書いているところに意志と意図が表されていてわかりやすいです。(うまいな、、、)
一番伝えたいことがキャッチコピーとして載ることは、意志が伝わる度合いの差になるのではないでしょうか。

2)-2 写真の配置が逆?これだけで大きく印象変わるもの?

実は掲示場でポスターを見ていて、気づいたことがあります。
山岸氏のポスターだけ写真が左側にあるんです。

それだけ?ですかね。少しこれも解いて行きます。

掲示場で並んでいるポスターを見る時、
番号の並び順や縦書きが多いことから自然と【右から左に目線が動く】んです。

右から目線がながれてきたとき、他の候補者は、写真→名前→情報という順序で見ます。

山岸氏のポスターでは「元朝日新聞記者」が最初で、情報→名前→写真で見る。
さらに、写真の体の向きが目線と逆方向になっているので、目の動きが塞き止められたような「うっ」という感覚をなんとなく持ちます。
写真が大きいので上下で目が逃げられない、ということもあります。
2)-1でポスター単体で見たときと目の動きが異なるのも迷ってしまい「ストレス」になります。

最初に入ってくる情報が過去の経歴であることもあり「経歴アピール」が強めに印象に残った可能性すらあります。
さらに目の動きが強制的に止められた「なんとなく窮屈な感じ」も残ります。
意識的に「嫌な印象!」ではない「なんとなくキツイ」。
ビジュアルを作ることって、多くの人の「なんとなく」を意識的に誘導できるものです。

つまり、意識的に認識する情報でも、無意識な目線の動きとしてのビジュアルとしても「印象」の作り方が良くはなかったようには思います。

2)-3 ポスターで「印象」を作るなんてできるの?

改めて早い段階で当確した4名のポスターを見てみます。

それぞれのポスターの「色」がわかりやすくないですか?
例えば丸川氏のポスターで「これ何色のポスターですか?」って聞かれたら、ほとんど「赤」って答えると思うのですよ。
そうやって答えられるくらいに、ポスターのメインとサブの色が(ちゃんと文字を目立たせる効果を考えながら)選ばれているのでしょう。

詳細は書いていると大変なので省きますが、色は人の印象に大きく関わります。

もちろんデザインだけが色を決めているのではありません。
写真も大きい要素です。
写真を見るとわかるのですが、洋服もポスターのメインカラーとサブカラーで統一されています。
山口氏はメインカラーのスーツにサブカラーのネクタイですね。

もちろん偶然ではなくて、すべてを計画設計されているのでしょう。
これって意外と重要で、最終的にできあがるものを計画設計するのは
はっきりとテーマやコンセプトがないとできないことです。
選挙ポスターにおけるテーマやコンセプトは「候補者の政策」以外にないです。

それを表現できたコピーライターさんやデザイナーさん、すごいなぁ…。

さいごに

長々と選挙ポスターを絵解いてきました。
もちろんポスターだけで当落が決まるとは思ってはいません。が。
 接戦惜しくも敗れた山岸氏のポスター
 早い段階で当確が出た4名のポスター
絵解いて出てきた内容って、、ただの偶然なのでしょうか。

ビジュアルの中で、何が目立つか=何が言いたいか
情報の取捨選択、カチッとハマるコピー、写真の印象、文字の大小、配色。

その選挙ポスターは政策を真ん中にして、見る場所のことを考え設計しているか。

選挙ポスターを見て「コンセプト」がいかに重要か痛感しました。
作る方としたら何がしたいかわからないままには、何も作れないんです。
せっかく候補者の多い東京にいるから、毎度研究してみるのも面白いかもしれませんね。

みなさんの地域の選挙ポスターはどんなだったでしょう?

読んでくれてありがとう!心に何か残ったら、こいつにコーヒー奢ってやろう…!的な感じで、よろしくお願いしま〜す。