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自ら背伸びを仕掛けていこうという願い

この度の震災において被害に遭われました方々にお見舞い申し上げます。
当該地域における被害がこれ以上拡大せず、少しでも早く地域にお住まいの方々が無事の暮らしに戻れますことを心よりお祈り致します。
また、ご対応に当たられている関係者各位に深く感謝申し上げます。
微力ではございますが下記経由で募金をさせていただきました。
https://donation.yahoo.co.jp/detail/1630064

新年あけましておめでとうございます。
私の暮らす場所ではお正月は毎年雲ひとつない快晴のことが多く、今年もまたよく晴れた朝だったことをすごく嬉しく思いながら元日を過ごした。

今年はどんな一年になるだろうか。「計は元旦にあり」となるとややのんびりすぎちゃうなという感じだし、いい意味でなるようにしかならないじゃんと思うこともしばしば。意図や予定をしていなかった幸せが昨年はとても多くて、そういうささやかな驚きを伴う喜びを楽しみにしていたいと思う。

それではせめて心持ちだけでも定めておこうと考えた結果、今年は「自ら背伸びを仕掛けていく」という気概を心掛けることにした。
きっかけは、普段使いの香水を変えたことだ。

実はここ一年半ほど私は香水を探していた。
20歳の時に出会って一目惚れならぬ一鼻惚れをしてからほぼ毎日同じ香りを纏っていたのだが、のべ10年ほどつけていたその香水が、あるとき品薄を経たのちにリニューアルの名の下で以前とは全く別の香りになってしまったのだ。端的に申し上げるとその香りが、どちらかというとあまり好みのものではなくなってしまったのだ。

「ずっと探していたのはこれだった、私のためにあるのではないか」と思うほどの香りがもう存在しないことがショックではあったが、しかしそれ以上に10年もの間美しい香りを供し続けてくれたその香水と生産関係者の方々への感謝がこみ上げてくる出来事だった。何事も当たり前ではないし、これまでがあるならこれからもある。同じ名前、違う香りのこの香水とブランドさんがこの先もたくさんの愛を受け取っていきますようにと願った。

さて、私の少ないながらも頑固な美意識の根底には幼い頃に読んだ美輪明宏氏のご著書が少なからず影響している。『おしゃれ大図鑑』の中で自分らしい香りを纏うことにいて書かれていて、初めて読んだ時から「わたしの香り」と思えるものを日々纏うアイデンティティの示し方への憧れが止まなかった。

当然気分も体調も日によって違うし、世の中には魅力的な香りが溢れているだけに、これ、と定めるのは難しい。それでもなお出会ってしまったのが先述の香りで、化けて出るなら姿はいらないからこの香りになりたいと思うほどのものがすぐそばにあることが支えのようにも思えて好きなライフスタイルであったため、以来探し続けていたのだった。

そして、その香り探しがついに実ったのが昨年末なのであった。

昨年夫がお香やアロマに目覚め、いい香りのものに興味があると言うのでそれまで香水好きの友人とよく訪れていたnose shopさんに連れ立って行った。どこでも見たことのないような珍しい香水がたくさんあって、香りの内訳やコンセプトが詳細に書かれていて楽しく香りも試しやすい大好きなお店だ。

そんな場所で、無数にある中でボトルの佇まいがふと気になって手に取った一本。それが、Bdk Parfumsのグリ シャーネルだった。

甘くスパイシーで、そのものずばりの匂いがするわけではないのに良い意味でなんだか煙たい印象の香りだなあと思いながらコンセプトを読んだら大人っぽくてびっくりしてしまった。

セーヌ左岸のティノ・ロッシ庭園。夜に集うダンサーたち。銀色の月と船明かりに照らされた体が音楽のリズムと混ざり合う。夏の暑さが二人の男女を喧騒から連れ出し、翌朝のシーツが眠れぬ夜の香りを放つ。

nose shop webサイトの説明文より

大人っぽくて色っぽい。私には似合わないだろうな、印象というか人物像とは遠くかけ離れているし・・・と思いつつ、煮詰めたようなイチジクがメインにあってすごく好きな香りなのでムエットに吹きかけて頂いて、ほかの香りも楽しく試しながらその日は帰った。

同じお店にあってもう一本気になったのは、L'Orchestre Parfumというブランドの「ローズトロンボーン」という一本だった。

華やかで甘くて、金管楽器の音色のように明るい印象。とびきりキュートな印象もありつつ、ラム酒の香りが大人っぽくもある。すごくすごくいい香りで、あ〜〜この多幸感を毎日味わいたい!と思うほど好きだった。

しかしその後、グリシャーネルの香りがどうにも忘れがたいことに気がついた。今まで好んできたフローラル系の香りとは随分異なる印象のその香りがなんだかすごく心地良くて、何度でもそのムエットをかぎたくなるし、その香りの存在を忘れられない。
何より、この香りが似合う人になれたらいいな、と思ったとき、きっとこれもまた運命の出会いだったのかもしれないと腑に落ちた。

私が思う「この香りが似合う人」のイメージは、上品な大人のお姉さんだ。今の私よりもずっと素敵で、お目にかかったらきっと「こうなりたい」と思うようなお姉さん。

今までだったら、好きだけど私にはまだ早いかな、で選択肢それ自体手放していたと思う。けれど、愛する香りと共にあった10年を経て、私はすっかり大人になった。心がけ一つで毎日学びの機会はあるものの、分不相応かもしれないが意味のある成長の機会が次から次に訪れていた日々は過去。この香りとの出会いが「意識して憧れに近づいていかねば」と思えるきっかけだとしたら、従ってみようと思ったのだ。

そして、出会いからそう遠くないうちに購入に至ってからはずっとつけている。いいジャケットをきたような不思議な感じもありつつ、とっても心地よい。今まで出会ってきた香水よりも濃度が高いのかすごく持続して1日に何度もうっとりするが、その裏返しで、心地よいのが私だけにならないためには今までよりもずっとTPOへの気遣いが必要そうなのも、かえって大人っぽくて気に入っている。上手に付き合っていきたい。

「まだ早いかも、でもいつか。」
「似合わないかもしれないけど、好き。」
「こんな風になれたらいいな、憧れ。」
この香りに限らず、そうした感情のきっかけを見つけたら怖がらずに近づいて、意図的に手に取ってみようと思う。自ら背伸びを仕掛けていくような選択を積み重ねていきたい。

佳き一年になりますように。
今年もよろしくお願いします。


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