〇企業概要

・TSMC（台湾セミコンダクターマニュファクチャリングカンパニー）は、世界最大の半導体ファウンドリ（受託製造)企業です。1987年に台湾で創業されました。創業者のモリスチャンは当時55歳でした。時価総額は6,325億ドルと世界で10番目に大きい企業です。

〇事業内容

≪ビジネスモデル≫

・TSMCは世界の電子機器を動かす心臓(半導体チップ)を大量製造する存在です。しかし、自社製品を製造するのではなく、他の企業が設計した半導体を製造する「ファウンドリ(受託生産)」というビジネスモデルを採用しています。AppleやNVIDIA等が主要顧客で、スマートフォンやPCなどに当社が製造した半導体チップが組み込まれています。製造する半導体チップをSoC（システムオンチップ）と言い、ある装置やシステムの動作に必要な機能のすべてを一つのチップにします。
　このビジネスモデルは、お客さんがレストランに食材を持ち込み、プロのシェフがそれを使って料理を作るようなもの、彼らが料理する半導体は世界中の胃袋を満たします。

・最先端半導体製品の製造には設備投資に必要な金額が莫大となり(工場で働く人件費も増加)、財務諸表の悪化を招きます。高収益企業を目指す上で、各半導体企業はなるべくファブレス(工場を保有しない)にしたい。そこに目をつけたのがモリスチャンことTSMCです。このビジネスモデルで高収益を維持することは極めて難しいですが、TSMCは高収益を出し続けています。

≪売上構成≫

・2023年第４四半期決算売上構成比は上記図の通りです。HPCとスマートフォン向けSoC売上が86％を占めています。その他にIOT向けチップが5％、自動車用チップが5％を占めています。

・HPC（ハイパフォーマンス・コンピューティング）とは、大量のデータ処理や複雑な計算を高速で実行するために設計されたコンピューティングの一形態です。HPCと生成AIは密に関連しており、生成AIの技術発展には大量のデータを高速で処理出来るHPCが不可欠となります。HPCの売上はQoQで17％上昇しています。

≪強み≫

①微細化技術

・半導体の歴史はより微細化なものを求めることを繰り返しており、直近決算時にはN3（3nm）プロセス技術を用いた生産量が増加しています。
　3nm（ナノマイクロメートル）とは1メートルの10億分の3です。地球の直径を1メートルだとすると、3.6cmぐらいなのでだいたい親指ぐらいです。この大きさの回路を製造出来るのがTSMCの技術であり、TSMC以外に発注出来ない状況を作り出しています。ちなみに特許申請件数は8年連続で世界首位みたいです。

②生産能力
・微細化技術に加えて、大規模な生産キャパシティーがあることも強みです。全世界に製造工場を持ち、大量生産体制を確立しているため、大量供給能力で競合他社との差別化を図っています。日本でも工場建設が話題となっていますね。

〇業績

≪4月18日の決算発表に注目≫

・2023年第4四半期決算において売上はQoQ+14.4%,YoY+0%でした。4月18日発表の2024年第1四半期決算での売上上昇率に注目したいと思います。また、どのセクターの売上が上昇しているのか（特にHPC）についても注目したいと思います。

・2024年第1四半期決算予想の売上総利益率（GrossMargin）は52％～54％、営業利益率（OperatingMargin）40％～42％となっています。このガイダンスに対して着地がどうか、未達だった場合は何によって利益率が悪化したのかを確認したいと思います。またガイダンスをクリア出来ているかは重要ですが、投資フェーズであり多少の乖離はやむを得ない可能性もあると考えています。

≪展望≫

・我々個人がAIを日常的に使用していることはほとんどありません。日常的に使用する未来を考えるとiPhoneのようなスマートフォンから使用する可能性が極めて高いと考えています。そんなiPhoneが世界中に広がりシリーズ化する…では誰がその中にある半導体チップを製造するのか？考えると面白いと思います。

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