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過去の流行語を使って短編小説を書いてみた

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 小学校からの親友であるケンジは変わり者として有名だ。教室のドアが開くと、ケンジが意気揚々と入ってきた。

「皆さま、おっはー!」
「ケンジ、相変わらずだな」
「何がだい? マブダチよ」
「いや、もういいや」

 ケンジに話しかける生徒はこのクラスでは俺しかいない。周りの生徒は話しかける以前にドン引きしている。

「ケンジ、あんたが使う言葉いちいち古すぎんのよ」

 いや、もうひとりいた。

「これはこれは生徒会副会長の安室由紀さん。あなたのお母様はアムラーですか?」
「今は安室奈美恵は関係ないでしょ」
「あなたアムラー知ってたんですね。じゃあシノラーは?」
「篠原ともえも今は関係ない」

 由紀はそう言ってケンジを睨み付けた。副会長よく知ってんなぁ。

「副会長、私はあなたと会話できてとても嬉しいです」
「私は嬉しくない」
「そんなに照れなくてもいいじゃ、あ~りませんか」

 これはウザい。ぶん殴りてぇ……。

「チャーリー浜出してくるな!」

 副会長、あんたはどこまで知ってんの?

 その後もケンジはホームルーム直前に来た生徒に「おそよう」と言ったり、担任の教師が来たら「皆さま、口チャックです」と言って勝手に仕切ったりとウザさ全開だった。授業中でもケンジは周りの目など気にしない。

「おい前田、ちゃんと授業聞いてるのか」
「あたり前田のクラッカーです」
「お前、よくそんな言葉知ってんな……」
「私が幼いころ、父がよく食べさせてくれました」

 一度その父親を見てみたい。

「先生は食べたことあります?」
「あ、ああ多少……」

 先生が若干引いてる。ベテラン教師をここまで困らせるとは。
 四時間目が終わって昼休み。ケンジはひとりで弁当箱を開けて合掌する。

「……いただきマンモス」

 普通に「いただきます」でいいだろ。

「この味は…インド人もびっくり! 美味しすぎてバタンキュー!」

 クラスは失笑の嵐。人前でよくできるな。

「ふー、結構食べましたがまだお腹は余裕のよっちゃん。では、購買部にでも行きますか」

 ケンジはそう言って席を立ち、「レッツラゴー!」と言って教室を出ていく。もう戻って来るな。
 五分後、ケンジが戻って来ると、ドアにセッティングされた黒板消しがケンジの頭に当たった。クラスは爆笑の嵐。

「ふっ、僕としたことがこんなものに引っかかってしまうとは…せっかくの花金なのに」

 みんなは一斉に「は?」とすっ頓狂な声を出した。お前は何を言ってるんだ…。
 六時限目が終わりホームルーム。

「前田、頭の白い粉みたいな奴はなんだ。チョークか?」
「ええ、昼休みにチェベリバなことがありまして…」
「もういい、お前とは話が成立しない」

 先生にまで相手にされなくなった。今度はケンジが「はぁ」と素っ頓狂な声を出した。
 ホームルームが終わってみんなが教室を出ていく。

「マブダチよ、僕は先生に変なこと言っただろうか。MK5みたいな顔をしてたんだが…」
「朝から変なこと言ってるだろ。そもそもMK5ってなんだよ」
「『エム・ケー・ゴ』じゃない『エム・ケー・ファイブ』だ」

 どっちでもいい。小学校から一緒だけどケンジはわからんことだらけだ。わかろうとする気は一切ないが…。
 ケンジは昇降口で靴を履き替え、俺に視線を向けた。

「それじゃあ、お先にドロンするよ。バイナラ」

 ケンジはそう言って手を振り、颯爽と帰っていった。


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