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『短編』突然に、さも跡形もなく 第5回 /全7回

 パソコンの画面はただぼんやりと光ったままで、俺は特に意味もなくネットの中をうようよと彷徨っていた。

適当にニュースページなんかを見たって、頭の中は真木がバンドをやめることでいっぱいで内容なんて全然入ってこない。ただこうして無意味にページをスクロールすることで落ち着きを保っているみたいだった。

いつの間にかうるさかった大学生のグループが静かになっていた。横目で見た時に、一番うるさかった男がぐったりと頭をテーブルに付け寝ているのを見てすぐに納得した。考え事をしていたせいか、時間はあっという間に過ぎ去ったようで、店内は随分と静かになっていた。

ドリンクバーに立った時に、俺と同い年くらいの男の人がぐっとパソコンに向かいひたすら何かを打ち込んでいる姿があった。格好はラフだったけど、髪型とか、風貌が一般の会社員の様相だ。

同じくらいの年数を生きていてもこうも違ってきてしまう。俺も本当はこうなるべきで、どこかで大きく道を外れてしまったんじゃないかって自己嫌悪に陥る。その姿は脳裏に強く焼き付き、考えを改めるターニングポイントなんじゃないかとまでも思わせた。

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