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「直感」文学 *日常の毒*

 テレビから吐き出されるのは決まって暗いニュースばかりだった。

 直之(なおゆき)は、こういったニュースを見ると心の底から元気を失う。……まったく、感受性の豊かな人というのは随分と面倒な人生を送らなければいけないのだな、と私はあくまで客観的に思った。

 彼は、そんな世の中のニュースから逃げるようにしてヘッドホンを付け、目を瞑ったまま項垂れていた。私は彼に声をかけようと思うけど、正直、掛ける言葉は何も見つからない。
 私は彼の肩に手を当てた。彼はヘッドホンを外し、「暗いニュースばっかりだ」といつもよりも暗い声で言った。
「そうね」
と私は答える。
「こんなニュースを見るために生きているんじゃない」
そう言うけど、そんなことを言われても私だって困ってしまう。「分かってるわ」と言いながら彼の頭を優しく撫でた。
「どっか行こう。暗くない場所に」
私は彼の言葉に頷き、「着替えるわ」と言った。

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