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「直感」文学 *最中に思う*

 激しく降る雨の音で起こされた。
 なんだか少し憂鬱。だけどなんで憂鬱なのか分からない。……きっと雨に起こされたりなんかしたからかな、なんて思っているけど、そんな”かりそめの理由”なんてほとんど意味を持たなかった。
「あなたいつもそうやって嫌なことから逃げてばかりだからダメなのよ」
お母さんと喧嘩するのは、珍しいことじゃない。っていうか、最近はほぼ毎日のようにしている。たかだか進路の話じゃない。成績が良いからって有名な大学に進学しなきゃいけないなんて一体誰が決めたのよ?私だってやりたいことがある。そりゃお母さんのおかげで私は今もこうして生きていられるけど、私の人生は私のものであることは変わりないでしょう?
 ……絵が描きたいの。ただそれだけ。そうやってお母さんは私が嫌なことから逃げてるなんて言うけどさ、私はただ好きなことに真っ直ぐなだけだもの。
「いつか来るわ。……ああ、あの時お母さんのいう通りにしておけば良かったって思う時が。だからお母さんのいう通りにしていたら間違いないのよ」
いつかそんな時が来るかもしれないけど、でも、私は未来のために生きてるんじゃない。今のために生きているだけ。それに未来なんて絶対に誰にも分かりはしないんだから。それはお母さんだって一緒。絶対に分かりっこないんだから。

 階段を降りて下に行くのが辛い。最近は毎日喧嘩してるから、喧嘩する時以外はほとんど会話を交わさない。あえて言葉を発しない、とでもいうような態度を私もお母さんも取る。お母さんのくせに大人気ないとも思うけど、一人の人間なんだもの、しょうがないか。
 雨の音はまだうるさい。でも、ぴりぴりとした今の二人の状況なら、これくらいの雑音があった方がマシだとも思えた。

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