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『短編』再会はどこか不安定 第2回 /全5回

「おいおい、別にいいだろう?お前だってどうせ彼女いないんだから」

と何度かのやり取りをした後、業を煮やしたのか

「あの、すみません。一緒に飲みませんか?」

と気付けば将が声を掛けていた。女の子たちは一瞬怪訝な表情を浮かべ、同じタイミングで見合わせた。それからまた少しの間があって、二人は僕たち二人の顔を見定めているようだった。それからまた少しの間があり

「ああ、いいですよ」

と一人の女の子が言った。もう片方の女の子はあまり納得いっているようには見えなかったが、それでも何も言わずに笑顔を作った。

「ありがとうございます!」

と急に元気になる将。せっせとテーブルを付けて、僕たちは四人で飲み始めたのだった。

 二人は大学生だった。まあそれは、風貌を見てなんとなくそう感じていたし大きな驚きもなく、僕たちが二十五歳だと伝えた時も、年相応に見えるのか、全く驚きが見られなかった。お互いにいくつかの質問を重ねたが、然したる共通点は見つからない。ただ最初は堅かった空気は徐々に和んではいったから、それなりに楽しかったとも言える。

「そろそろ、帰ろうか」

と一人の女の子が言うと、「ああ、うん」ともう一人の女の子も首を縦に振った。

「ええー、もう帰っちゃうの?」

と将は引き留めようとしたが、「明日も早いんですよー」と交わされる。

「あ、じゃあ連絡先教えてよ?また今度どこか行こう」

と彼の必死の抵抗も空しく

「ごめーん、充電切れちゃってんだー」

と言われてそそくさと二人は帰ってしまったのだった。その後、将はどうにも煮え切らないのか「もう一軒行こう」と言い出した。僕は女の子二人に気を遣って疲れていたし早く帰りたかったから抵抗した。

「分かった、分かった。じゃあ俺んちの近くでちょっと付き合ってくれよ、ファミレスでいいから。そんで今日はうち泊まっていけよ。明日休みだろう?」


ほとんど無理やりに近かったが、将はどうにも折れそうになかったのでしょうがなく彼と同じ方向の電車に乗った。渋谷からそれほど遠くはない駅で降り、僕たちは彼の家の近くだというファミレスに入った。

「お煙草お吸いになりますかー?」

「ああ、はい。喫煙席で」

「こちらへどーぞー」

禁煙エリアにある客席にはちらほら人がいたが、喫煙エリアの席にはほとんど人がいなかった。時代はそうなりつつあるのだろう。僕たちのように煙草を吸ってる人間は、時代遅れなのかもしれない。

 気付けば、すぐに女の子に声を掛けてしまったせいで、僕たちの話をほとんどしていなかった。将とは大学の同級で、卒業してから初めて会う。三年もの時間が空き、環境も大きく変わっているのだから話すことなんていくらでもありそうなものだったが、それも叶わぬままここまで来てしまっている。将が今具体的にどういう仕事をしていて、どういう環境でいるのか。僕は何も知らない。

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