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毎日超短話398「君の人生」

しばらく学校にいきたくないと、勇気を振り絞って父に言うと、「了解」とだけ返ってきた。

「いいの?」
「君の人生だからね。ブラック企業に入ったらさっさとやめたほうがいいし。その代わり、父さんが学校に行くから、そのあいだ、君は父さんの代わりに家のことをやってくれない?」

と言われたもので、父は次の日から学校に行った。おれの代わりに授業を受けて、部活をやって、友だちとマック行ったりして、青春を謳歌しているらしい。今は「宿題やりたくねー!」と帰ってきてソファにダラダラ体を預けている。

おれは父の代わりに家のことをしているが、家事や雑務はもはや労働だとわかって、学校行ってるほうがマシだと気付いた。

「そろそろ学校行くわ。別に学校嫌いじゃないし」と父に告げる。

「そりゃよかった。有給もまるまるなくなっちゃって、どうしようかと思ってたんだよ」

シングルファーザーの父は、そう言ってから「でも、君の人生だから」と笑いながらテイクアウトしてきたポテトを広げた。

絶対、楽しんでたよな。
悔しさと嬉しさがぐちゃぐちゃだ。



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