見出し画像

やってみないと分からない。在庫が怖い気持ちを抱えてZINEを出すことにした


個人的に本を作りたい。ZINEを出したい。1冊目の書籍を出版して以降、その欲望が強くなっている。
文章を書いて、装丁を自分で決めて、ささやかな本を作りたい。まだ具体的なことは何も決まっていないが、実現できたときの充実感を想像するたび、穏やかな春風に撫でられたように気持ちが踊る。

しかし、ひとつ大きな課題がある。本を作るなら向き合わなければならないもの。「在庫」である。

個人発行のZINEやリトルプレス、同人誌といった、自分が作りたくて作る本。そういった自費出版の本を何部刷るかは悩みどころだ。
過去に作った二次創作の同人誌では、多く刷りすぎて抱えた在庫を処分した経験がある。逆に少なく刷って10分で完売し、後から来た方々に何度も謝ったこともある。
kindleで出せば在庫には悩まずに済むが、今回は電子書籍ではなく紙の本で出したい。

家に極端にものが少ないため、在庫はとても目立つだろう。楽しく作ったはずの本に、収納とメンタルを圧迫されるのが目に浮かぶ。
その状態は、想像するだけで恐怖だ。声にならない唸り声を上げながら彼方に駆け出したくなる。


同居人が似たような個人活動(CD制作)をしているので、「在庫を持つのって怖くない?」と質問してみた。
最初にCDを作ったときは不安だったらしい。でも、今は長期で売りきる見込みのある数だけを作り、在庫は一時的なものと捉えているそうだ。

同じ日の昼食、同居人と自宅で駅弁を食べながら雑談。
「スーパーでやっている駅弁フェアは斜に構えて眺めていたけれど、自分たちで買ってみると案外楽しいね」「何事も一度やってみないと分からないね」「やってみて違うなーって思ったらやめたらいいわけだしね」と話した。

そのくだりで、これまで話していたZINE制作のことが頭をよぎり、自然に「本、作ってみようかな」と口に出していた。
在庫の話をひとしきり聞いてくれていた同居人は「いいんじゃない?在庫も一度抱えてみたらいいんじゃない?」と言ってくれた。


歌人の三田三郎さんが、第一歌集をうっかり500冊も作った話をエッセイで書かれていた。

「なぜか歌集を500冊も刷っていた」と表現するあたり、確固たる意志ではなく、何となくの500冊だったと分かる。
こんな見切り発車でもいいんだと分かり、少し気が楽になった。さすがに500部は刷らないけども。

在庫を抱えることと捨てることが、自分の中でセットになっている。でも、必ずしも、在庫を持つ=最終的に捨てる、ではないはずだ。

抱えた在庫で何ができるか、何を起こすか、あるいは何が起こるのか。それは、文字通り「やってみないと分からない」。


というわけで、2024年内に自費出版の本を出すと決めた。

書くのは好きだが、売り方を考えるのは苦手な分野だ。でも、売り方はひとつではない。届け方とも言い換えられる。
文学フリマなどの即売会に何度も出る。通販で売る。友達に渡す。個人経営の書店に置いてもらえるか交渉する。人のアイデアを借りたっていい。
自分が作ったものならなおさら楽しみたい。

長期的に在庫を持つなら、パニックにならず、どうするかを考える余裕が生まれるかもしれない。
自分に関係ないと目の前を素通りさせていた情報たちが、売り方を考えるのに役立つ可能性もある。
決めれば意識は変わり、状況は動くものだ。

こうなったら、在庫を抱える自分の不安や心配も織り込んで、まるっと全部を楽しみだと思い込むことにする。

どうせやるなら、大変で楽しいほうがいい。




この記事が参加している募集

今年やりたい10のこと

カフェでおいしいコーヒーを飲みます!