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「新潮社「考える人」・考える四季 ー高坂正堯教授の書斎」

さて、こちらは、私が今まで書いた短いコラムの中でも、自分自身でもっとも気に入っているコラムの一つです。「高坂正堯教授の書斎」。

こちらは、サントリー文化財団の支援を頂いて、「高坂正堯研究会」というなんとも興味深く、とても楽しい充実した研究会に参加させて頂いた際に、京都にある高坂正堯先生のご自宅の書斎を訪問し、そこで感じたことを文章にしたものです。

こちらの研究会の成果は、次のような一冊となっています。こちらは、私が参加した共著の中でももっとも気に入っている一冊であり、また有り難いことにとても高い評価を頂いている一冊でもあります。高坂門下の五百旗頭真先生と中西寛先生が編者となっており、そのお二人の文章はとりわけ愛情を込めながらも、可能な限り客観的に、政治学者高坂正堯を描こうとする試みでもあります。


そして、最後に次のような言葉を綴って文章を締めております。

現在、言葉が力を失いつつあり、政策論争が衰退し、真剣な学問的討議が見られる機会も減ってきた。それぞれがそれぞれの世界にこもり、外部との交流を遮断し、そして自らの正しさを絶対視してしまう。高坂教授の、よく言えば色鮮やかで、悪く言えば雑多な書物の溢れる本棚を眺めていて、氏が時空を越えて異質な思想と「交流」していたことを感じた。そして、その「交流」を多くの場合に楽しんでいたことを。氏は異質な考えを持つ学者と交流し、また海外の高名な知識人や、国内外の政治家や官僚、メディアや出版界など、多くの異分野の人々との交流を楽しんだ。健全な思索のためには他者との交流も必要であり、その基礎には他者に対する敬意と誠実な態度、そして異質なものを受け入れる寛容性と、少しばかりの冒険心が必要であることを、深く感じることのできた「書斎見学」であった。 


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