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魔法にかけられて

これほど宇宙の深みにはまるものはない。
もしかしたら、私がはまりたいだけなのかもしれない。遠ければ遠いほど、時間が経てば経つほど美化される想いに酔いしれたくて。


光源氏も、簾越しの姿の見えない女に想いを馳せていたのだろうか。
四季の色や香りに、秘めきれない恋心を載せた和歌。
魔法のかけられた文字は、すべてを許すように夜の簾をあける。
朝の光がタイムリミットを知らせるまで。


日々、私たちは魔法をかけ、魔法をかけられている。
目が合うだけで、舞い上がる制御不能な心は、ただ一つの行き場を求めるの。
食欲をなくした大きな瞳に、不安と穏やかさが同居する。
何億という視線のたった1つが、私の身体を感じさせる、全て仮面の下で起きていること。


魔法にかけられた麦と葡萄が生み出す空間。唇が触れ合うまで、痺れる時間を止めて。

ケーキを口に入れた瞬間の幸せのように、千年を超える恋の詠のように。次の世界まで持って行きたい。

紙切れの契約はいらない、
今日もあなたの魔法にかかりたいだけ。

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