見出し画像

何の参考にもならないグルメ報告「龍吟」

★★★☆☆

説明不要の三ツ星日本料理店。

六本木で開店し日比谷へ移転。年を重ねるごとに豪華に、高額に、味は濃くなっていった。

店内は各所に龍を想起させる意匠が施されており、その凛とした空気に身も心も財布も引き締まる。

移転当初はウェイティングルームのガラス越しにフクロウが2羽見えていて、あまりに動かないので剥製かと思ったが、こちらを向いたとき心臓が止まりそうになった。

スタッフに聞くと2羽とも「お空に昇っていった」そうだ。天に帰ったということだろうが、鳥に使うにはやや誤解を招く表現だろう。

接客はもちろん丁寧で、料理の見せ方もさすがの貫禄。サービス精神旺盛で客を楽しませようという心意気を随所に感じさせてくれる。

まず、ナプキン。筒状に巻いて中央を帯で締めてあるように見える。広げてみると分かるのだが、一枚の布を折り紙の要領でそう見えるように折っているのである。粋だ。

料理も風鈴が鳴ったり、液体窒素で凍らせたり、工夫に余念がない。量もしっかりしていて序盤で満腹になる。少なめにとお願いしても「美味しい部分が削がれるので」と固辞される。どうぞ残してくださいという懐の深さだ。

なので、こちらも調整しながら食べるのだが、コースの途中でメニューに無いおぼろ豆富を放り込んできて水の泡にしてくれる。しかも、忘れた頃にまたサプライズが来る念の入れようだ。

ラバトリーもアーティスティックで隙がない。

女性用の案内表示
男性用の案内表示
正確さを要求する超攻撃型フォルム


皿も一品一品が逸品だ。最後の薄茶は素人でも分かるほど艶っぽい器で出てくる。しげしげと眺めながら「これ、良いものなのですか?」と問うと、「楽茶碗です」と答えるや否や奪うように下げられた。徹底した危機管理である。

持ち帰りで山本シェフこだわりの「六本木ぷりん」も購入できる。HPを見ると「玉子の言葉を、玉子に代わってお伝えする玉子のメッセンジャーを努めるプリンです」という前衛的な説明がなされていた。

なかなか他では味わえない体験ができるのだが、美食というよりは食のテーマパークといった方がしっくりくる。

そんなことを苦いカラメルを舐めながら思うのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?