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【論文】職務ストレッサーとメンタルヘルスヘのソーシャルサポートの効果。サポートの効果は上司より先輩が鍵!?

私は今、立教大学大学院リーダーシップ開発コースの修士2年生です。

私が大学院に出願する際に提出した研究計画書のタイトルは、『組織で働く人々のメンタルヘルスの不調による休職、退職を減らすためのコミュニケーション手法の開発』です。

自身がメンタルヘルスの不調によって休職や退職をした経験から、どうすれば組織でメンタル不調者や休職者を減らすことができるのか?を探求したくて大学院に入学しました。

まだまだ道半ばではありますが、この研究を深めるべく、組織×メンタルヘルスにまつわる論文を読んで記録していこうと思います。
論文から抜粋している部分もあるので、全文読みたい方はこちらからご覧ください。(1994年の論文です)

【論文名】職務ストレッサーとメンタルヘルスヘのソーシャルサポートの効果/国際経済労働研究所/小牧一裕さん

この論文の対象者が20-30代の女性ではありますが、部下、後輩、同僚が元気ないなあ、最近メンタルの調子が悪そうだなと思っている方の何かヒントになるかもしれません。


職務ストレッサーとソーシャルサポートって?

この論文は、対象者を20~ 30代 の女性就業者とし、職務ストレッサー(ストレスの原因となる刺激のこと)とメンタルヘルスの指標としてのうつ傾向との関係にソーシャルサポートはどのような影響を及ぼすのかについて職務別 (事務職、営業職、販売職、専門職)に検討しています。また、サポート源として、上司、先輩、同僚の3つを想定しています。

ソーシャルサポートとは
「個人が、他者から愛され、大切に思われている、尊敬され、価値を認められている、あるいは相互支援や責任の社会的ネットワークの一員である、などを知覚、経験すること」と定義されている。
この論文では、。Fenlason&Beehr(1994)の研究を元に情緒的サポートと道具的サポートの2種類に分けて考えている。

ウィルズ(Wills,1991)の定義

ちなみに、情緒的サポートとは勇気づけたり同情したりただそばにいてあげるというような情緒面への働きかけのことで、道具的サポートは、問題を解決するために必要な資源を提供したり、その人が資源を手に入れることができるような情報を与えるような働きかけのことをいいます。

対象者:20~ 30代の女性就業者


20~ 30代の女性就業者、計590名 。内訳は、事務職 (卸売・小売業、サー ビス業および金融・保険業の一般事務職316名 :平均年齢24.7歳 )、 営業職 (銀行、証券 など金融機関の営業職123名 :平均年齢24.4歳)、 販売職 (百貨店、スーパーなど卸売・小売業の販売職76名 :平均年齢24.0歳 )、 専門職 (システムエンジエアなどコンピュータ関連の専門職75名 :平均年齢25.6 歳)に従事する管理職を除いたフルタイムの女性就業者。

調査方法:無記名回答方式


質問紙による無記名回答方式で、計30社からデータを収集。調査は1993年 10~ 11月に実施。

尺度:4種類


1.ストレッサー尺度
2.ソーシャルサポート尺度
3.メンタルヘルス尺度
4.自律性、多様性尺度

結果と考察:上司よりも先輩の方がサポートの効果あり!?


【結果】
①各尺度を職務によって多重比較 (Tukey法 、5%水準)した結果
職務によってストレッサーの認知に差が見られた。
・サポート尺度では、上司、先輩、同僚からの情緒的サポートおよび上司からの道具的サポートについては職務による差は見られなかった。しかし、先輩からの道具的サポー トでは事務職 >営業職、同僚からの道具的サポートでは営業職 =販売職 =事務職 >専門職となり、情緒的サポートでなく、道具的サポートで有意差が見られた。
・ストレッサーとメンタルヘルスとの関係ではほぼすべての職種で有意な負の相関を示し、ストレッサーが高くなるにつれてうつ傾向も強まることを示している。
 
②うつ傾向を従属変数にした場合に、第1段階にストレッサー、第2段階に各サポート、第3段階にストレッサーとサポートの交互作用を投入し、R2の増分が有意であるものを示した階層的重回帰分析をした結果
・サポート源を比較すると、主効果では営業職、事務職ともに、先輩の情緒的、道具的サポー トは他のサポートより従属変数を予測するものであり、その重要性が示された。上司の情緒的、道具的サポートでは、すべての職種で主効果が見られなかった。
・女性事務職の場合、上司の情緒的サポートを多く受けていると認知している人は、役割葛藤や役割曖味性が強い場合でも低い場合と同様、精神的健康 を高く維持することができるが、サポートをあまり受けていないと認知し
ていると、役割葛藤や役割曖味性が強い場合は、 うつ傾向が強くなる。

【考察】
女性就業者における職務ストレッサー とメンタルヘルス (うつ傾向)へのサポートの効果は、従来のサポ―卜研究では上司>同僚であったが、本研究では先輩サポートの効果が見られ、主効果、緩衝効果 ともにその数は先輩>上司>同僚の順となっている。また、先輩サポー トの効果は職種に関係なく見られ、メンタルヘルス面での先輩サポートの重要性を示唆するものである。

上司のサポートについては、役割葛藤、役割曖味性が強いときでも、職種によっては緩衝効果をもつことが示された。このことは役割葛藤や役割曖味性といった上司自身がストレス源となるときに、仕事についての情報 (やり方やコツなど)を 上司が丁寧に指導することによって、その仕事の全体の中での位置や重要性を理解することがで きるようにな り、また、上司が部下の相談にのったり、部下を励ましたりすることが精神的健康の維持につながることを意味する。

まとめ


この研究の結果では、サポートの効果は先輩>上司>同僚の順で効果があるとされています。
一方で、上司のサポートも、役割葛藤、役割曖味性が強いときでも職種によっては緩衝効果をもつことが示されています。

どの職種でどのような人がサポートをすると効果的なのか、意識するだけでも組織で働く人たちのメンタルヘルスを保つことに繋がるかもしれませんね。

引き続き、組織×メンタルヘルスにまつわる論文を探究していきたいと思います!お気軽にフォローいただけると嬉しいです◎



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