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第百八話:一難去ってまた一難

 前回の投稿から2年以上の月日が経ってしまいました。
なんとも私らしく、穏やかではない月日をその間も過ごしていましたが、ようやく少し心も落ち着いてきたので、続きを書かせて頂きます。


 ダイレクターから降りるという旨のサインを貰いに指定をされた学校までやってきて、ただただ穏便にサインを貰って速攻帰ることだけを考えていた私とは対照的に、夫のほうは会ってよりを戻す話し合いをする口実くらいにしか思っていなかったようだ。甘い言葉をなぜか学校の食堂でささやいてくる夫を上手くかわしながら、サインを貰って速攻退散し、その足で弁護士事務所で手続きのお願いに行った。
 貰うものはもらって手続きも開始できたしと、少し晴れ晴れとした気持ちで自宅に帰る途中、夫から着信があり、深く考えずに出たところ、
「さっきサインしたレターは無効だ!あれで手続きをしたら訴えてやる。
あれを俺がサインした証拠はないし、そもそも俺はサインしていない!」
とすごい剣幕で怒鳴ってきた。
 今だったら、「おー、またロス劇場の始まりですね!!」くらい余裕で対応できるのだろうが、当時はそんな余裕もなく、一仕事終わったつもりだった私は速攻地獄の底へ突き落されたような気分になっていた。怒って電話を切ったあとも、ひたすら送られてくるメッセージ。内容は「弁護士と共謀して俺を陥れようとしている。」「俺はやり直そうとしているのに、この気持ちを踏みにじるなんて。」「あいつ(弁護士)とできているのだろう!俺は前から知っていた。」「俺はサインをしていない。だから、書類を偽装したお前たちのことを訴えてやる。」等々
これでもかというほど罵られ不安になり、弁護士や知人に相談したが、皆に笑って「大丈夫だよ、だって本人が理解してサインしたんでしょ。訴えられても、筆跡鑑定すればいい話だし。」と言われるだけだった。

 夫の精神状態のやばさを身をもって感じていた私は、みんなにそう言われても安心することができずにいた。私の予感は的中し、すぐに彼のお金への執着の異常さ(ダイレクターとして報酬がもらえれば、俺は家族を養えることができ、夫婦関係もすべて上手くいくと本気で思っていた)を知ることになるのだった。

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