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ファインダーから覗く父は、どこか祖父に似ていて、私は少し寂しくなった。

「お父さんな、今年で定年退職なんだ
最後に仕事の作業着で写真を撮ってくれないか」


そんなお願い事をされたのは
父さんの還暦の誕生日を迎える前のことでした。


ちなみに私の仕事は以前の記事でも
書いた事がありますが
こども専門のスタジオカメラマンです。
お宮参りから入学の撮影まで
様々なご家族の記念日を撮影しています。

そんな仕事をしている私ですが
実は自分の家族の写真って
ほとんど撮った事がないのです。

何より家族全員が写真を撮られることが
得意ではないので
撮った事がないというよりは
撮りたくても何かきっかけがない限り
撮らせてくれなかったとも言えますが。

特に母に関しては
カメラを向けると逃げていきます・・・笑

そんな中で頼まれた父さんの定年退職の記念写真。
正直父さんが定年であると聞いた時に驚きました。
もうそんな歳なのかと。
私が想像していた60歳って
もっとおじいちゃんなイメージだったので。

とはいえ実際に私の年齢の頃に
両親はすでに結婚していて
私の兄がもう3歳くらいになっていたわけですが。

(孫の顔見せられなくてごめんね汗)

そんな父さんの写真を撮ったのは
還暦のお祝いで家族でご飯に行った後のことです。

祖父母から引き継いで
父さんがお世話している畑のそばで
仕事の作業着を着た父さんの写真を撮りました。


カメラのファインダーから覗く父さんは
白髪混じりで
前よりも随分と華奢になって
顔も皺が増えていて

ほんのちょっとだけ
亡くなったじいちゃんに似ていて

私はカメラを構えながら
少しだけ涙が出そうになったのを
今でも覚えています。


大人になってから私はずっと一人暮らしだったので
父さんの顔をしっかりと見たのは久しぶりでした。

父さんの白髪や顔の皺を見て
時間の流れを走馬灯のように感じます。

これまで大きな怪我もなく働き
私たちを支えてくれた父さん。

たくさん働いて疲れているだろうに
休みの日にはキャンプやスキーや温泉旅行など
たくさん遊びに連れて行ってくれた父さん。

感謝の気持ちと少しの寂しさが押し寄せて
また涙が出そうになって
バレないように気持ちを心に仕舞い込み

「お父さん、だいぶ老けたね〜
なんだかおじいちゃんに似てきたんじゃない?」

と冗談混じりに笑って誤魔化しました。


いつもは照れ臭くて
お互いお酒でも飲まない限り
顔を突き合わせて話すことは少なくなったけれど
こうやってファインダー越しであれば
家族を見つめる事ができる。

時の流れの速さに焦ってしまうこともあるけれど
それを止めることはできないし
私だって両親だってどんどん歳を重ねていく

今は今しかない。

だとするならもっと家族のことを見つめていたいし
もっとたくさんの思い出を残していきたいと
私はそう思います。

家族の思い出を残すために
私はカメラを生業としているのですから。


自分の家族のために
この腕と目を使わないでどうする。

小さい頃は私が嫌がるくらいに
事あるごとにたくさん写真を撮ってくれていた父さん。

今度は私がその役目です。
撮る側って意外と撮られないし
慣れていないんですよ。

(実際に私がそうなので笑)


今度実家に帰ったら
家族みんなで写真でも撮ろうかな。

色々落ち着いたら家族みんなで旅行にも行こうか。

そんな風に思えるのもカメラのおかげです。

撮りたい景色があるから
撮りたい人がいるから
誰かのために撮りたい瞬間があるから
私のために撮りたい瞬間があるから

カメラは私にとって行動力の源です。

私の大切な人たちと大切なカメラへ
これからもよろしくね。


由佳

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