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ウィル・スミス、アカデミー辞めるってよ。前代未聞のアカデミー賞について思うこと。

とんでもなく話題になってしまった、アカデミー賞授賞式でのウィル・スミス。

プレゼンターで登壇したコメディアン、クリス・ロックが、脱毛症でスキンヘッドにしているウィル・スミスの奥さんの髪型を「G.I.ジェーン」(女性が兵隊志願してスキンヘッドで頑張る映画)にたとえ、きつめのジョークでいじった。それに奥さんを侮辱されたとウィル・スミスがキレて、栄誉あるアカデミーの壇上でクリス・ロックをぶん殴っちゃった件。

ギズモード

さらに悪いことに、クリス・ロックをぶん殴って席に着いた後、Fワード(Fuckinとか汚い言葉)を連発しながら「妻を侮辱するな!!!!」を目ん玉ひん剥いて怒り狂った姿が全世界に放送されてしまった。

そして、もっと最悪なことに、その後、ウィル・スミスが主演男優賞に輝いてしまう。スピーチでは涙ながらに言い訳のスピーチをぶちかまし、時間オーバー。

きらびやかなハリウッド映画業界に憧れているわたしは、毎年1回行われるアカデミー賞授賞式の華やかなステージを観るのが大好きで、今年も独占放送しているwowowを期間限定で契約し、見逃し配信で、この騒動も含め、アカデミー賞授賞式をひととおり観た。

1.あの一件で、2年ぶりの華やかなアカデミー賞が台無しになっちゃったね



個人的な感想を述べると、ハッキリ言って、「あの騒動のせいで」アカデミー賞の舞台が台無しになった。超お粗末。あーあ、やっちゃったね。

まあ、アカデミー賞の登壇者って、必要以上に俳優いじりをするし、面白いか微妙なジョークも多い。内容的にも日本ではありえないレベルに失礼なので、それがアメリカにとって普通なのかどうかわからない。

だけどまあ、殴られたクリス・ロックも、台本があったかどうかは知らないが、女性の容姿をいじるのって、このご時世にどうなの?とか、ジェンダーレスとか言ってるのに、女性志願兵のスキンヘッドに例えるのもどうかと思う。

けれどここは年に一度の栄えある舞台。映画陣にとってはこの場に来ることを人生の夢としている人だっているような「超フォーマルな場所」だ。

そこで、主演男優賞にノミネートされている俳優、つまりその会場の中でも「選ばれし者」が、「妻を侮辱されたから」という理由でつかつかと壇上に上がり、無言でプレゼンターをぶん殴るというのは呆れる。

折しも、ロシアでいきなり隣国に攻め入るプーチン大統領に、「暴力反対」と世界が冷ややかな目を向けているときなのに、「むかつく」と恐ろしくフォーマルな場で人をぶん殴るアメリカを見せつけてしまったわけだ。

一昨年は中止、昨年は規模を縮小して小さな会場で行った。だからドルビーシアターで司会者を迎えて華やかにやるのは、本当に久しぶりで、みんなが「アフターコロナ」な気分を味わえる華やかなイベントだった。それなのに、あの一件で興ざめ。

念願の受賞を果たした人だっていたのに、あいつのおかげで台無しになったよ、と思う人もいるだろう。

2.いままで頑張ってきた黒人俳優の努力を台無しにしちゃったね


さらにさらに残念なことに、ウィル・スミスは黒人。奴隷制度の時代が終わっても、いまなおアメリカに根強く残る人種差別を乗り越えて、やっと黒人が映画のメインキャストとして当たり前になり、白人の俳優たちと肩を並べて賞レースに参加できる時代になったのだ。

そこまでの道のりにはきっと、数々の人の努力があっただろう。そういう人たちの努力さえ、あの一瞬でぶち壊しにしてしまったように思える。

あのステージで、ウィル・スミスがやってしまったのは、白人が昔持っていた「野蛮ですぐキレる黒人のイメージ」そのものだったから。

オフィシャルな場で、タキシードを着ていても、キレたらところかまわず暴力をふるい、席に戻ってもその怒りは冷めやらず、目をひん剥いてFワードを連発する姿は、どうひいき目に見ても、ひどいものだった。

いくら相手の発言が悪くても、手を出してはいけない世の中なのだ。身近な暴力が我慢できないのに、戦争反対とか言えないし、暴力を肯定する時点で、最大の暴力、戦争を肯定することになるからだ。

3.てか、それでも主演男優賞あげちゃうんだ?で、笑顔でもらっちゃうんだ?


ツイッターなどでその事件だけを見ている人が多いと思うが、アカデミー賞授賞式の時系列では、ウィル・スミスがクリス・ロックをぶん殴ったのは、授賞式中盤。その騒動の後、授賞式の終盤に、なんとウィル・スミスが主演男優賞を受賞した。それにもビックリ。

いくら事前に投票で決まっていたとはいえ、壇上でひどいふるまいをしたあんな俳優に、賞をあげてしまうんだなぁ。とガッカリした。

わたしならその首位の賞をはく奪して、次点の俳優さんに賞をあげたい。スポーツの世界だって、ドーピングした選手は金メダルはく奪だよね。協議中の違反でも、フライングでさえも受賞を逃すのだもの。アカデミー賞だって受賞権利はく奪もアリでしょ。

どうやらそのあと分かった話では、「アカデミー協会は、暴力をふるったウィル・スミスに退席を命じたが、ウィル・スミスはそれを拒否した」みたいなニュースが流れていたけど、それ、余計悪いじゃん。

よく堂々と主演男優賞を受け取って、涙ながらの言い訳なんかできたもんだ。厚顔無恥とはこのことだよ、と思ってしらじらしい涙を見ていた。

そもそもウィル・スミスって、演技上手いと思ったことないし、アカデミー賞に上がるような名作ってあったっけ?と思ったけど、そこは人気投票的な側面があるから、個人的なつぶやき、ということにしておく。

最後に作品賞で、大好きな「コーダ あいのうた」が賞を獲ったのでほっとしたが、胸糞悪い気分はぬぐえなかった。


受賞後の会見も、オスカー像を肩にかけてポーズをとって、いやいや、何やってんのアンタ。わたしはあんたを殴りたい。

4.賛否両論あるけど、百歩譲っても、やっぱ場を選ばないとだよね


この話、えらく話題になったようで、アカデミー賞にみじんも興味がない中2息子までツイッターで知っていた。

「ウィル・スミス、誰かぶん殴ったって??」と聞いてきたほどだ。

ネットニュースでも賛否両論、あれこれ意見が飛び交っている。アカデミー賞がそこまで話題になるって、ほとんどないと思うけど。

そしてどうも、日本の論調は「家族が侮辱されたら、殴ってても愛する者を守るべきだ」というウィル・スミス擁護派が多いようだ。

対してアメリカでは「暴力は絶対に許されるべきではない」という論調が強く、アカデミー協会なども協議したうえで、数日たって結局、冒頭の「ウィル・スミス、アカデミー辞めるってよ」になったわけだ。

日本の論調もわかるといえばわかる。

自分の家族が侮辱されたときに、一緒にヘラヘラ笑っていられちゃたまらない。という気持ちはすごくわかる。

うちの旦那も親戚の集まりで話のネタに困ったときは、わたしをディスって笑いを取ろうとしたりしてムカつく。だからきっと、他人の前でわたしがディスられたら、おそらく一緒になって笑うだろう。

そんなときに、ウィルみたいな旦那が、妻を侮辱するな!!と怒ってくれたら、なんだか頼もしい人、と思うのかもしれない。でも殴ったらドン引きするけど。

だからもし、クリス・ロックと、ウィル・スミス夫妻がどこかで食事したとして、その場でクリスがウィルの妻を侮辱したとしたら、家族を侮辱するな!と怒ってもいいんじゃないかと思う。超個人的な場所だし。それでもやっぱり殴るのはどうかと思うけど。

ということで、日本でいわれていることも、気持ちとしては分かる。

だけど「フォーマルな場で感情のコントロールをする」ことは、やはり大人として必要なことなのではないかと思う。

ウィル・スミスの生い立ちなどはあまり知らなかったが、小さいころは親父が母親を殴って大変だったんだそうだ。それを聞くと、いろいろあったんだろうなとは思うが、だからといって、公の場で人をぶん殴って、その場を台無しにしていいということにはならない。そういう過酷な人生を歩んできたって、まともな理性を持てている人はいくらでもいる。

そして何より、彼があの舞台に立つとき、彼が背負っているものが大きすぎるんだもの。アメリカ随一のアカデミー賞授賞式で、主演男優賞候補として参加し、黒人俳優の代表として舞台に立っているのだから。


まあ、あれこれ書いたけど、「ガッカリ」のひとことでしかない。

なんだか間の悪い司会者だし、作品群も地味ではあったが、開始前のレッドカーペットはコロナ前を思わせるにぎやかさだったし、ビヨンセのパフォーマンスも素敵だったし、レッドカーペットで華やかなドレスに身を包んだ俳優さんたちを見てワクワクした。

だからこそ、ガッカリ感が強い。

時間はかかっても、ぜひここはしっかり精査して、主演男優賞を今からでも再考してほしいなぁと思う。

そして来年こそ素敵なアカデミー賞授賞式を観たいなぁと思う今日この頃だ。

wowowに契約ついでに、BTSがパフォーマンスを行うグラミー賞授賞式も観る予定。こっちは楽しい授賞式であればいいなぁと思う。

今日もお読みくださりありがとうございました!

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