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自身に介護経験のあるケアマネの書いた本が読みたい

再現性のない介護

介護で何か悩みを抱えた時に、相談相手を選ぶ際、まず初めに大きな分かれ道がある。この分かれ道の標識には、介護に限らず、進学、就職、恋愛、結婚、出産、育児、転職、どの悩みに対しても同じ文字が書いてある。

経験者か経験者ではないか

もちろん、そのこと自体を経験していなくても、正確なアドバイスができる専門家や、心理士やカウンセラー、悩みを聞いて心を軽くしてくれる友人もいるが、経験しているかどうかはものすごく大きい分岐点だ。つまり、経験している専門家や、経験している友人は、さらに心強い存在になる。

介護以外の悩みもそうだが、悩みは本当に個人的で、完全に同じ悩みの人はこの世にはいない。例えば、進学の悩みは、家庭環境や兄弟の有無、教育資金、価値観、地域性などによって、答えも変わってくる。恋愛だって、出産だって同じだ。

私は、出産時、日本人でロンドン在住、30歳、車の免許なし、車なし、英語で出産する英語力なし、病院で生むのはいや、母乳で育てたい、途中まで逆子、前日まで勤務という状態だった。この10項目が同じ人は、おそらくほかにいないと思う。

だからと言って、ほかの人の体験談が参考にならないわけはない。
英語圏で生んだ人の話、母乳育児をした人の話、逆子だった人の話、前日まで仕事を続けた人(これはあんまりいないかも……)の話をかき集めて、合成すれば、私の処方箋になる。

ところが、介護の場合は、他の人の例が、直接的な参考にならない。安心できないのだ。税金が使われる、つまり、制度が関わってくる場合はちょっと違うのかもしれない。
まず、使える介護制度は、介護度と、収入により決まる。そこが分かれ道になっている。同じ悩みの人が振り分けられたわけではないのだ。

もちろん一般の人の「介護を通じて人生をもう一度学んだ」のような道徳話はとても心にゆとりが生まれるし、「オムツがもれちゃう場合はこのようにおしりをくるもう」みたいなハウツーものは、1対1で役に立つときもある。が、やっぱりそういう断片的な情報だけではうまくいかない。

もっと大きな視点で見ればいいのかと思った時期もあったが、それでは森を見て木を見ず状態(笑)になってしまう。

先ほど、経験者かそうでないか、また専門家で経験者は最強だと書いた。
そういう立ち位置の人が、専門性と経験性を盛り込んだ書籍の出版をするのを期待する。

今世の中に多くある本は、個別過ぎて、自分の親に当てはまるものを探すのに、苦労するし、「まあこれが一番近いかも」と妥協する時もある。そうするとやっぱり違うのだ。

自身が介護経験のあるケアマネさんが本を出してもいい。こういうのは制度に挟まれている人が書くべきものなのかもしれない。
しかし、現実は、ケアマネさんはそれこそ制度と当事者と家族に振り回されて忙しすぎる。日本政府は、ケアマネさんにもう少し資金投入しないと、いけない。

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