見出し画像

風来メンタリティ

 日『風来のシレン6』の最初のダンジョンをクリアした。

 戦回数は4回。できれば1回を狙っておきたかったが1回目2回目とそこそこのレアケースに当たってしまったもので4回目での初クリアとなった。まあその辺りは後述するとして。ところでゲームの話をするからには何らかの攻略記事かと思われたかもしれない。けれども今回はちょっと違った話をしようと思う。不思議のダンジョンシリーズ、あるいはそれに類するシステムのゲームによって培われる、プレイヤー自身の『生きる力』についてだ。

 ずはゲームのルールをおさらいしておこう。プレイヤーは主人公のキャラクターを操作して何種類かの『不思議のダンジョン』を進んでいく。生きてゴールにたどり着けばそのダンジョンはクリアとなる。
 ただし途中で倒れてしまった場合、それまでに獲得したアイテムは失われ、経験値もリセットされてレベル1に戻った状態でスタート地点に戻されてしまう。再挑戦した際にはマップの形もアイテムの配置も変わる。1回1回がやり直しの利かないその時限りの冒険、それがシリーズの大きな特徴となっている。
 その特徴を踏まえ、ゴールに向けて繰り返しプレイすることで徐々に練磨されていく能力について見ていきたい。


1.危険への対処力

 述したとおり、ゲームの目的は生きてゴールにたどり着くこと。もし倒れて冒険が失敗に終わってしまえばまた最初からやり直しになる。そのため、目的をより確実に達成するためにはそれまでに得た知識と経験をもって、起こりうる危険を事前にできる限り予測し、回避していかなければならない。
 たとえば先の見えない通路で矢を打ちながら、つまりは視界に入らない敵の存在を確認しながら進んだり、部屋の入口と出口では念のために罠の有無をチェックする、などといった行為が挙げられる。なぜそこまで念入りに危険を予測し回避できるよう努めるのかといえば、たった一手のミスが失敗につながる場合がある、と身をもって分かってくるからだ。
 れでも危機的状況に陥ることはある。そうなった場合の対処法もまた、技量と応用力が問われる部分だ。強力なアイテムを惜しみなく使えば目の前の危機は確かに去る。だが道のりは長く、場合によってはボスとの戦いも控えている。目の前だけ切り抜けたのでは、いざという時に必要な物品が足りない……などということになりかねない。
 出せる手の内のどれを使い、どれを切り札として残すか。損失・消費を最小限に抑えながら活路を開く、そのための知識と判断力はキャラクターの経験値が無くなっても残るものだ。展開がランダム、というと運次第のように思えるかもしれないが、実はクリアのために運の要素が占める割合は少ない。積み重ねの連続がやがて最良の結果をもたらす、ということを忘れてはいけない。

2.感情制御

 情といっても色々ある。ただこの手のゲームで最も感情が揺れ動く瞬間といえばピンチに陥った時だろう。危険を予測し、準備を整え、心構えができたつもりでいても、実際にピンチが訪れると心臓が高鳴るだとか、気が動転したようになる、という人も多いのではなかろうか。
 大げさに感情制御といっても、そういったゲーム中のスリルや、あるいはゴールにたどり着いた時の高揚感まで低く抑えようというものではない。そういった感情を抱きつつも、ある程度の落ち着きを保つ、そんな感じだ。なぜ(ゲーム中でさえ)落ち着きを保たねばならないのか。これも危険への対処と同じで、落ち着きを失う事で発生してしまうミスによって、冒険が失敗に終わる場合があるからだ。
 ンチの場合は特にわかりやすい。焦りと動揺のあまり操作を間違えてしまい、それがきっかけとなってあえなく倒れてしまった、ということはなかっただろうか。行動しようとする方向に、向きは合っているか。杖の使用回数は残っているか。壺や巻物をうっかり床に置こうとしてないか……。
 そんな状況を何度か経験するたび、一種の冷静さみたいなものが身についてくる。なぜ? もちろん同じミスを、同じ展開での失敗を避けるために。取り乱しそうになりながらも熱くなるなクールになれ――と、キャラは風来人でも気分はさながら大魔道士ポップ、しかし重要な局面になるほど、その冷静さ、慎重さが明暗を分けるのは間違いない。

3.あきらめない力

『次こそは絶対に攻略してやるぞ!』といった気概と情熱を持って取り組む、それも勿論いいことだ。ただその気概がそのまま成功体験につながればいいのだが、失敗に終わってしまったときに反動が大きい。一瞬にして燃え上がった熱意みたいなものは、案外燃え尽きる時も一瞬だったりするもの。ここでいう『あきらめない力』は、ちょっとタイプの違うものだ。
 挑戦が失敗に終わる、それ自体は残念な、気勢を殺がれる結果だ。しかし大抵の場合、その原因ははっきりしている。敵の強さを見誤ったり、アイテムの選択を間違えたり、調子に乗りすぎて警戒を怠った、なんて場合もあるかもしれない。いずれにせよ、どこかのタイミングでの何らかの行動が失敗の引き金になっている、というのはプレイヤー自身がいちばんよく分かっていることだろう。
 原因がはっきりしているということはつまり、対策を練りやすいということでもある。前回の反省を踏まえ、次は異なるアクションを試す――そのアクションの是非もやはり結果に直結するものであるから、より先に進めるようになった、という実感が得やすい。成功か失敗、クリアかゲームオーバーかの二つしかない中でも、成長が感じられないまま失敗に終わるのと、少しだけでも前に進んでの失敗とでは意味合いが異なる。
 失敗の瞬間にこそやる気を失っても、積み重ねられた成長の体験、実感があれば簡単には投げ出したくならない。今回はここまで、けれど次はもう少し先まで。そんな緩やかな意気込み。ろうそくの灯かりのような、寄せては返す波のような、穏やかでかつ途切れにくい『あきらめない力』が、ゴールとの距離を縮めてくれる。

『生きる力』などと少々大げさに銘打って、長々と語ってしまった。とはいえそれほど難しく考えることでもない。危険を予測し、冷静に対処し、多少の困難や窮地においてもあきらめない力がつけば、少しくらい人生の難易度が下がるのではないか……といったところだ。
 現実は常に選択と決断の連続であるから、ゲーム中の困難を通してそれらを疑似的に体験するということは、後悔しない選択の練習である、ともいえる。たかがゲーム、されどゲーム。何の準備もなく事に当たるよりは、余裕が生まれるのではないだろうか。

 さてここで話を私のプレイングに戻そう。4回目の挑戦でクリア、では1~3回目は何でダメだったのかといえば……。

  • 1回目:12階まで盾が一つも手に入らずに倒れる

  • 2回目:14階まで武器が一つも手に入らず、ようやく拾えたのも攻撃力が低くて(妖刀カマイタチ)18階まで粘るも火力不足&アイテム枯渇で倒れる

  • 3回目:どろぼーを試したところあっさり失敗

 ……と、運の要素が占める割合は少ないと言いつつ最低限の運のよさは無いとどうにもならないね、といった結果で終わっていたのでした。かなしみ。

この記事が参加している募集

全力で推したいゲーム

ゲームで学んだこと

読んでいただきありがとうございました。よろしければサポートお願いいたします。よりよい作品づくりと情報発信にむけてがんばります。