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不可思議刊行筆風録7

前回

 さて。初回校正をどんどこ進めていくさなか、別件でもメールが届いていて、それが『帯文』と『カバーイラスト』の検討に関することだった。
 帯文とは読んで字のごとくで、書籍につけられるオビに載る文言・文章のこと。帯文はメールの時点で編集の方が考えてくれていて、イメージも添付されていた。候補は表紙側・裏表紙側ともに3つで、ひとつずつ選んで組み合わせるというわけだ。

 本を買った後にはもしかして邪魔になるかもしれない『帯』というやつだが、書店に置かれる分にはカバーとともにこいつも大事な『本の顔』である。短い文ながらしっかり目を通し、もっとも相応しいものを選んだつもりだ。表紙側はオンラインショップの書影でも確認できるのでぜひ眺めていただければ……と思ったところで、そういえば裏表紙側を一度も見せていないことに気付いた。裏表紙側はこんな感じとなっている。

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『特徴のないぼくと魔法のランプ』の冒頭部分だ。他の案は『しあわせセールス3』『人生交換所』の、どちらも途中の部分を抜き出して提案されていたので、冒頭部分のやつを採用することにした。最初の一行二行は書き手として気を遣っているところでもあるし、ここで興味を持ってもらえればなあ……という願いを込めて、といったところだ。いやまあウラだけど。ウラとはいえ。

 帯文はこれで希望を伝えて、著者側としてやることは終わり。書体やカラーはカバーと合わせてうまく調整してもらえれば、ということで任せることにした。問題はカバーである。
 デザインというやつは単に見た目がキレイとかカッコいいとかいうよりも、『ユーザーに適切にアピールする』のが最も大きな目的で、大前提である。自費出版を多く手掛ける中で、著者と出版社に認識のズレがあった、なんてこともあったのだろう。事前にA4紙3枚にわたる『カバーデザインについて』という注意書きが送られてきたほどだから、想像に難くない。
 なるほど注意書きの中には『内容を知っている前提での仕込み等は避けた方がよい』みたいなことも書かれていた。見た目と内容がちぐはぐだと手に取る人に誤解を与えるおそれがあるから、やめた方がいいということだ。

 どのような表紙にするか。最初に考えていたのは、白地に黒の文字だけを乗せたシンプルなもの、というイメージだった。しかし、参考までにと本屋をのぞくとそういう表紙結構たくさんあった。見やすくていいかな、と思っていたものの、これでは似たような本の中に埋もれてしまう。
 そこで背景と文字の色味を逆にして、黒地に薄い色の文字のせたカバーを提案することにした。カラフルな表紙が並ぶ中にぽつねんと佇む真っ黒い本。うん、悪くない。
 大雑把な印象のほか、カバーに対し求めたオーダーは、
 写真素材でない、画や幾何学模様を主とした図柄。
 背表紙を見たときに読み取りやすい、視認性に優れた字体。
 この2つだった。あと、どこかに赤か青、もしくは両方が入ればなおよい、とも伝えていた。これは確か、その年の占い本に書いてあったラッキーカラーだったと思う。そうして出来上がってきたのがちょくちょくリンクを張ったときに表示されている例のアレであったわけだ。
 まさにイメージ通りというか、思い描いていた以上にブキミインパクトのある仕上がりに、ひとり心の中で爆笑していたのを覚えている。
 不思議。不可思議。不気味。わけがわからない。キモい。そういった印象を抱いてもらって大いに結構。だってそういう本だもの。嫌いな人にはドン引きされる代わりに、そういうのを求める人には目に留めていただけるカバーになったと信じている。
 カバー案はもうひとつあって、そちらはもうちょっとマイルドな印象であった。しかしながら無名作家の一作目なんて存在を知ってもらうところから始めなければならないわけで、何よりインパクト優先である。

 ところで、お手持ちの小説のカバーを外してみたことはおありだろうか。
『不可思議短編集』のカバー下は、このようになっている。

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 うん。申し分ない。

 カバーも決まり校正も順調、作業も残りわずか……となったところで、最後の最後にやらかしていた、のはまた次回の話で。

つづく。

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