WSD定義

ワークショップをデザインするとはどういうことか

ワークショップをデザインするとはどういうことか。ワークショップの定義と同様に、検討しておく必要があります。

ワークショップの「企画・運営・評価」のサイクルとして捉える考え方

ワークショップデザインというと、当日のファシリテーションと切り分けて、準備段階の「プログラムデザイン」のみを指し示すケースもありますが、それではあまりに射程が狭すぎます。

ワークショップをデザインする営みを、もう少し広いサイクルで捉えるために、拙著『ワークショップデザイン論』では、事前の「企画」、当日の「運営」、事後の「評価」の3段階にフェーズを切り分け、評価の結果を次の企画に返すところまで含めて、そのサイクルをワークショップデザインとして位置付けました。

ワークショップそのものをデザインする活動の全貌という意味では、単なるプログラムの準備段階を超えて、もう少し大きい流れの中でデザインを捉えることができます。

ワークショップデザインとは、ワークショップの企画、運営、評価のサイクルである。

「経験のプロセス」を促すための学習環境のデザインとして捉える考え方

他方で、このサイクルモデルだけでは、ワークショップデザインとはいったい何をデザインしているのか、他のデザイン領域とは異なる「ワークショップ」に固有のデザインの対象と性質が見えてきません。上記のモデルでいえば、ワークショップデザインとは何を企画し、何を運営し、何を評価すればよいのかを言語化しておく必要があります。

たとえば「ロゴデザイン」であれば、企業のアイデンティティを視覚的に表現することで、社内外にブランドイメージを形成し、コミュニケーションの媒介になることが、ロゴに固有のデザインの対象と性質の説明です。

それでは、ワークショップはどうか。一言で言えば、その特徴は「経験のプロセス」のデザインという捉え方で説明が可能だと考えています。ここでいう経験とは、人が何かに気づいたり、集団が変化したり、新たなアイデアが創発するような「変化のプロセス」を指しています。集団が「日常の経験」から離れて、意味のある変化につながる「非日常的な経験」のプロセスを導くのが、ワークショップデザインの実態です。

経験のプロセスをデザインするためには、どんな参加者が(共同体)、どこで(空間)、何を使って(人工物)、何をどんな順序で(活動)、経験するのか、「学習環境」を有機的にデザインしなければなりません。それを踏まえて再定義をすると、以下のようにまとめられます。

ワークショップデザインとは集団が「日常の経験」から離れ、「非日常の経験」経験を通して変化するプロセスを促すために、学習環境(活動・空間・共同体・人工物)を有機的にデザインすることである。

ワークショップの「活動」の基本構造

前述した定義において、もっとも経験の質に影響を与える変数は「活動」(何をどんな順序でやるのか)のデザインです。

拙著『ワークショップデザイン論』では、ワークショップの理論的源流であるジョン・デューイの経験学習の理論と、それを定式化したコルブの経験学習モデルを参考に、ワークショップの単体の「活動」の基本構造を[導入][知る活動][創る活動][まとめ]の4段階で定義しています。

ちなみにこれは「ワークショップ」に限らず、会議やイベント、授業などワークショップの要素を活用したいその他の活動デザインにも援用可能です。1時間の会議であっても、2時間のトークイベントであっても、50分間の授業であっても、漫然と時間を使うのではなく、使える時間が参加者にとって豊かな経験になるようにプロセスをデザインすることは必須です。※時間の配分は目安です

以上を踏まえて、これまで述べてきた定義を以下にまとめます。

ワークショップデザインとは、集団が「日常の経験」から離れ、「非日常の経験」経験を通して変化するプロセスを促すために、学習環境(活動・空間・共同体・人工物)を有機的にデザインすることである。

このうち「活動」は、特に経験の質に影響を与えるため、基本プロセスである「導入」「知る活動」「創る活動」「まとめ」の4段階に従って、戦略的に構成する必要がある。

活動の基本プロセスをベースにした学習環境を、企画・運営・評価する一連のサイクルが、ワークショップデザインの全体像である。

以上、単発のワークショップのデザインに焦点を絞って、定義について検討してきました。もう少し踏み込んで、そもそも社会において「ワークショップが何に役立つのか」を考えていくと、ワークショップ単体のデザインを超えた、複数のワークショップを組み合わせたプロジェクトデザイン論の域に議論は拡張されるのですが、それはまた別の機会に論じることにします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?