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エッセイ #6 |「切手のないおくりもの。」

以前、祖母が亡くなった時に、同じタイトルのブログを書いた。

私は大好きな祖母以外にも、もう一人、「切手のないおくりもの」を届けたい相手がいる。

遡ること26年前、私が小学校3年生で9歳の頃の話だ。

当時、私が通っていた小学校で、「地域のご老人と交流をしましょう!」という授業があった。交流方法は「お手紙を書くこと」。手紙を書く相手は予め先生が決めていて、私たちは手紙を書く相手をランダムに割り振られる形だった。

そんな中私は、当時70歳くらいのおばあさんに手紙を書くことになった。

当時どんな内容の手紙を書いたかは、もうすっかり忘れてしまったけど、おばあさんからすぐに返事が届き、封筒には住所が書いてあった。当時私が住んでいた場所と近かったのが印象的だった。

そこから私はどういうわけだか、「もう一度お返事を書きたい!」と思い、今度は個人的におばあさんの家に手紙を送り、そこから長きに渡るおばあさんとの文通が始まった。

私はいつもふと思い出した頃に手紙を書いていて、季節が変わる度におばあさんとやりとりをしていたように思う。

おばあさんは、私が学校で友達と遊べるようにと、手紙と一緒に、折り紙で作った紙風船や、ゴム跳びなどを同封してくれることがあった。私はすごく嬉しくて、何度もそれで友達と遊んだ。その後も途切れることなくやりとりを続けていた。

時は流れ、私が高校生になった頃、おばあちゃんの旦那さん(おじいちゃん)が亡くなったという喪中の葉書が届いた。

おじいちゃんと私は、一度もやりとりをしたことがなかったけど、おばあちゃんが必ず封筒に、おじいちゃんの名前とおばあちゃんの名前を連名で書いてくれていたので、直接のやり取りこそはなかったけど、

おばあちゃんがどれだけ、おじいちゃんを大切に想っているのかは、子どもながらに手紙を通して感じていた。だからおじいちゃんの訃報を聞いて、私は思わず泣いた。おばあちゃんの気持ちを想うと涙が止まらなかった。

そこから私は、おばあちゃんを元気づけたいと思い、今まで顔を見せることもなく、文字だけのやりとりで文通をしていたけれど、初めてプリクラ(懐かしい!笑)を載せてみたり、自分の写真を同封してみた。するとおばあちゃんはとても喜んでくれた。

そこから更に時は流れ、私は結婚することになった。そのことを手紙で報告すると、おばあちゃんはまるで家族のように喜んでくれた。私も、おばあちゃんに大切な人と結婚をすること、そして自分の新しい苗字を報告することができて本当に嬉しかった。

でも、文通はそれが最後になってしまった。それ以降、おばあちゃんからの返信がパッタリと途絶えてしまったのだ。

「おばあちゃんは、どうしているんだろう。元気かな。」

でも、私は薄々気づいていた。筆マメなおばあちゃんから返事が来ないのは、きっとそういうことなんだろうと。でも私は確かめる勇気がなかった。

住所が分かっているのだから、直接会いに行けばよかった。そうしたら真実が分かったのかもしれないのに。でも私は真実を確かめることはしなかった。なぜなら、もしおばあちゃんがもうこの世にいなかったら・・・と考えることがとても怖かったからだ。

この時に、若者の私がおばあちゃんに元気を与えていたつもりが、本当は私の方がずっと、ずーっとおばあちゃんに元気をもらっていた事実を痛感した。

あの時、出せなかった手紙を、今ここで書こうと思う。

おばあちゃんへ。

お元気ですか?私はおかげさまでとても元気です。

あの時9歳だった私は35歳になり、結婚して丸10年が経ちました。

最後におばあちゃんと手紙でやりとりをしたあの日から、今日に至るまでの10年間で本当に色んなことがありました。

辛くて悲しい時、私はいつも、おばあちゃんのことを思い出していました。

「おばあちゃんなら、なんてお返事をくれるかな?」と何度も考えて、おばあちゃんの存在をいつも励みにしていました。

そんな私ですが、今でも後悔していることが2つあります。

それは「おばあちゃんのお顔を一度も見たことがなかったこと。」そして、「おばあちゃんとのやりとりが途絶えた時に、真実を確かめなかったこと。」この2つは今でもすごく後悔をしています。

「おばあちゃんに会いたい、お顔が見てみたい」と勇気を出して伝えればよかった。おばあちゃんが元気にしているのか、勇気を出して会いに行けばよかった。

9歳の頃から何度も何度も書いてきたから、この手が、頭が、今でもおばあちゃんの住所を鮮明に覚えているのに。

だからこの経験を、絶対に無駄にしないと決めて、今私は、後悔のないように、日々チャレンジを頑張っています。

口下手で、いつも話が長くなってしまう私に付き合ってくれてありがとう。便箋に何枚もお手紙を書いてくれてありがとう。

おばあちゃんは私にとって、本当のおばあちゃんも同然です。

天国でおじいちゃんとは会えましたか?仲良くしていますか?きっとあの手紙に書かれていたように、今でも2人は隣どうしで並んで、仲良く過ごされているんでしょうね。

私も自分の旦那さんと、将来そんな関係性になれるように頑張ります。

次、生まれ変わったら、今度は一緒に顔を見ながら、お茶をしたいです。私、美味しいお店、いっぱい知っていますよ。 

35歳になったあずさより。親愛なるおばあちゃんへ。

切手のないおくりものを、届けます。

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