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家庭のお茶菓子はマカロン?「鷗外と食」@森鷗外記念館

4月30日(日)は不忍ブックストリートという古本のイベントがあり、合わせて以前から気になっていたところに足を運んでみることに。

イベント会場は根津でしたが、その隣駅の千駄木にある「森鷗外記念館」にもずっと行ってみたいと思っていたので、今回も「ぐるっとパス」を利用して入館。

今回の特別展のテーマは「鷗外と食」。

森鷗外は江戸末期に生まれ、明治・大正を生きた作家で、彼の作品や日記に描かれる当時の「食」や家族の食にまつわるエピソードに基づく展示でした。

「鷗外自身は美食家ではなく、食への強いこだわりはなかった」
とのことでしたが、ドイツに留学していた経験もあり、医師でもあったので、やはり一般人とは全く異なる興味や好みもあったようです。

衛生学の観点から野菜だけでなく果物まで煮て食べていたとか。

鷗外は甘いものが好きで、饅頭を切ってご飯にのせた「饅頭茶漬け」を食べるほどだったそうですが、西洋菓子も好きだったようで、西洋菓子店で購入したマカロン(マクロン)を家族で食べていたそうです。

でも、鷗外も娘の森茉莉も作品中に「マカロン(マクロン)」と書いたところ、「飴玉」などと訂正するよう、出版社側から求められたこともあったとか。

「うちはこれこれの店でマカロン買ってますから!」
という反論をしたこともあったそうですが、当時の日本でマカロンを食べる人はまだまだ限られていたのでは。

「やはり一般庶民の家庭とは違うなあ」
と思ったのですが、家族を大切にしていた鷗外が嬉しそうに家族と食卓を囲むようなエピソードにはなんだかほっこりしてしまいました。

また、鷗外に関する動画を見られるコーナーもあり、数人の作家が鷗外について語る動画を興味深く拝見しました。

作家であり医師でもある加賀乙彦氏は鷗外の「空車(むなぐるま)」という短編をあげ、ドイツに留学して自分自身の研究をしたいと考えた鷗外が
「ドイツの最新の研究を広めろ、伝えろ」
と言われ、自分自身の小説を書こうとすると
「西洋の最先端の文学を伝えろ」
と言われ、
「あの鷗外でも、『力はあるのにしたいことをすることが許されない』(自分自身のオリジナルのものを作れない自分は空っぽだという空虚さ)という思いがあったのでは」
という内容のことを話されていました。

(その後、「空車」について調べて見ると別の意見をお持ちの研究者の方もいらしたので、様々な解釈があるのかもしれません)

作家の平野啓一郎氏は「舞姫」の主人公の諦念について語っていました。

彼は薄情な男に見えますが、彼の決断は個人の意思で決めたことではなく、彼が優秀すぎる人材だったからこそ周りがほっておかず、帰国せざるを得なかったのだと。

3.11の震災の後にこの作品を読むと、この諦念が受け入れやすくなったと話していました。

このようなお話を伺うと、また読み返したくなります。

また、館内には「モリキネカフェ」というカフェがあり、ランチはそちらでいただくことに。

わたしがいただいたのは「モリキネプレート」。

ドイツパンの店「タンネ」のブレッツェル、千駄木の「コシヅカハム」のセミドライソーセージとコンビーフ、ピクルスとオリーブ、ヨーグルトにドリンクはハーブティーを選びました。

ハーブティーもドイツのロンネフェルトの「ティーキャディ」のスイートベリーズ。

ハイビスカスやラズベリーなどをブレンドしたとても美味しいお茶でした。

また、そのトレーに敷かれていたシートには鷗外が写本した「膳部之事」の絵が。

「随分綺麗に描いてるんだなあ」
と眺めつつランチをいただきました。

不忍ブックストリートの会場に向かう途中、根津神社にもお参りに立ち寄りました。

つつじ祭りの最終日ということもあってか海外の方もたくさんいらしていました。

ブックストリートの2つの会場の近くにも古本屋さんがあり、読んでみたかった本を入手して帰宅しました。

1日だけのイベントでしたし、今日のような雨の日にはそんな散歩もできなかったので先週、行っておけてよかったです。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。