「唇って、きっと汚いの。リップスティックで彩っても、もう無理なの。」 それにしてはグロスで濡れそぼる唇で、レミが笑う。きょとんとそれを眺めていると、彼女はつま…
微かな温かみを伴って、彼女の指が私の頬を滑る。張り詰めた空気の中で彼女の漏らす潜めた声がほんの少し、獣地味た音色を奏でる。静かな夢を遮られたような気がして、な…
Yuki
2018年2月15日 23:54
「唇って、きっと汚いの。リップスティックで彩っても、もう無理なの。」 それにしてはグロスで濡れそぼる唇で、レミが笑う。きょとんとそれを眺めていると、彼女はつまらなそうに私を一瞥した。よくある女子大生ファッションに身を包むレミ。指定制服のスカート丈を常に長く保つ女子高生、私。そんな二人が喫茶店でお茶をするのには訳がある。レミは私の姉だ。学校帰りにレミに捕まり、こんな居心地の悪い場所へ来てしまった。
2018年2月15日 23:49
微かな温かみを伴って、彼女の指が私の頬を滑る。張り詰めた空気の中で彼女の漏らす潜めた声がほんの少し、獣地味た音色を奏でる。静かな夢を遮られたような気がして、なんだか夢見心地の自分がもの悲しい。 あれこれと頭の中で巡らす内に、彼女の柔らかな指先が私の唇に触れた。唇が乾く季節、それが十二月。リップクリームなんて塗る程に、私は女子力など持ち合わせてはいない。けれど、少しだけ、この瞬間だけ後悔した。