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#33 コスト意識はトレーニング

~少しだけならの気持ちが儲けを削る,ならぬことはならぬものです~

最近のハイボール人気のおかげでウイスキー原酒は品薄となり,ジャパニーズ・ウィスキーのシングルモルトなどは,オークションで結構な値段が付いているようです。それに較べてスコッチウィスキーはスーパーなどで安価で売られていて,ジョニ黒などが高根の花だったころとは価値の逆転現象が起きているような感じがします。

ところでそんなウイスキーが庶民のあこがれだった昭和の中期,新宿のネオン街で洋酒バーのチェーン経営していて盛況な会社がありました(そのチェーンは店舗数は減りましたが,今でも老舗のオーセンティックバーとして新宿に残っています)。ある時ご縁があり,そのチェーンの高収益な秘密をお伺いしたこところ,徹底的な棚卸のお話をしてくれました。ボトルの底からウィスキーが何センチ残っているか物差しで測って,それに応じて棚卸残高を計算するのだそうです。確かに,当時の1本1万円のウィスキーの残量1㎝の誤差は原価で500円くらいになっていたでしょう。

経営者が重箱の隅をつつくようなコスト意識だと大胆な投資ができずに事業は発展しないでしょうが,逆に「ざる」のようなコスト意識だと利益が残らず経営を存続させることは難しでしょう。経営者のコスト意識のポイントは,コストをかけていいものと削るものとを峻別する,つまり物事の軽重を判断し優先順位をつけられるか,ということです。そしてその優先順位の判断軸は,目標に向かっていくシナリオに合致しているかどうか,ということでしょう。

シナリオに沿っているかどうかは,まずは論理的であるにしても文学的なコンテキストの中で判断されるものかと思います。次にそれらを,いくつかのコストの最小化と,いくつかの機能や付加価値の最大化という観点から指数として評価するという,数学的なアプローチを試みなければなりません。そのようにして評価された選択肢を,最終的に経営者の直感も動員して優先順位をつけていくということになります。直感で大事にすべき感覚は,「それに費やす時間が付加価値を生み出すか,創造性につながっているか」というものでしょう。

稲盛和夫氏はJAL再建に際して「経営陣は会社の金を自分の金のように使うな(公私混同するな)」「コストをかけるときは,会社の金ではなく自分の金だと思って大事に使え」と説いて回ったそうです。最終的には,この意識が大切なのだと思います。

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