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一人っ子論の歴史(12)~なぜバッシングされてきたのか

▼今回の記事のハイライト▼

成熟期を過ぎた一人っ子批判論は、かつてのような手を変え品を変えの、色とりどりのパフォーマンスを提供できなくなってきた
これまでの一人っ子論は批判論が多く、しかもそのほとんどが男性によるものであった。
しかし、2000 年代の一人っ子論は、専門家ではない女性たちに担われるようになったといってよい。
彼女たちは女性の社会進出が肯定的に語られるようになった社会のニーズにこたえて、主に、女性、家族、子育てなどのテーマで執筆活動を行うライターであった。
ゆえに、一人っ子を擁護するだけでなく、不妊治療、離婚、シングルマザーなどの課題を乗り越えて一人っ子を産み育てる母親たちの味方にもなろうとしたと考えられる。
2000 年代は、介護保険料の改定など、福祉政策について注目が集まった時代であったことが背景にあると考えられる。
そしてなによりも、一人っ子はもはや、わがままでコミュニケーション不全な幼い子供や少年、青年の姿ではなく、老いた父母を一人で抱える成人、壮年の姿として想像されるまでに現実的な存在となった。

この記事は連載企画「一人っ子論の歴史~なぜバッシングされてきたのか」の第12回です。
▼第1回、第8回無料公開しました▼

前回の記事では、1990年代の日本において一人っ子擁護論が増加してゆく様子について書いた。

今回の記事では2000年代の日本において、とある報道に絡み一人っ子批判の典型が見られた一方で、一人っ子擁護論が女性の中から出始めたこと、一人っ子による親の介護について語られるようになったことについて見ていきたい。

●あの不登校報道に見る一人っ子批判の典型

2010 年、日本の皇族で、当時の皇太子夫妻の長女である愛子内親王が、小学校で男子生徒複数人から暴力をふるわれ不登校となっていることが報じられた。

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