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お取引先の会社の社長さんと社員さんたちの、こちらへの評価の温度差に手を焼く事がある

いつものグチ系話題です。笑

最近は流石に年齢とキャリアを重ねたので減りましたが、それでもたまに表題のような事は起こります。これは業種を問わず良くある話ですし、これは私だけではなく、誰にでも起こる事だと思います。

そんな思い出話を・・・

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私は和装染色品や絵画の制作を生業にしておりますので、呉服店さんやギャラリーさんとのお取引があるわけですが、お店やギャラリーの社長さんから社員さんへ作品の説明をして欲しいと請われるも、社員さんからは説明を迷惑がられる事は割と良くありました。

私の作品と私の創作姿勢と理論を、社長さんや仕入れ部門のトップの方は評価して下さり、ゆえにお取引になり仕入れていただいたりもするのですが、その会社の社員さんたちからも同じように思っていただけるわけではありません。

社員さんたちは、大体こちらを「また社長がこんな得体の知れないものを仕入れて来て困ったな・・・こんなもの、どうやって売るんだよ」ぐらいに思っていらっしゃるので当然その態度でこちらに接します。私は社員さんたちへ厄災を振りまく疫病神というわけです。

幸運にも数年お取引が続き社員さんたちも評価して下さる事もありますが、どんなにこちらが売上に貢献しても絶対に大手美術団体所属の作家でないと受け入れない人もいます。お客さまでもそういう方はいらっしゃいますね。

そんな私の立場なのですが、たまに会社の代表の方から「にへいさんは伝統文化や伝統技術に詳しいから社員にその辺りの事を説明してあげてくれないか?」(当工房のものだけでなく、他所のものについても)と請われる事があります。

私は「いやいや社長、そんなの、社員の人たちは聴かないですよ・・・」と思いつつも社長命令なので、それが呉服店であるなら、例えば近くにあった、いわゆる「辻が花」と呼ばれる作風のものを説明してみると「あ、それ、先日その先生から説明聴いたんで説明いりません」などと言われたりするのです。

それが友禅であっても型染めであっても「そんなの知ってるんで良いです」という具合に「オマエの話なんて聴いている時間は無いよ、こっちは他の仕事で忙しいんだから!」という態度で拒否されてしまうのです。

私の作品を解説しても「そんな能書きなんてカンケーねえんだよ、俺は今まで有名な先生がたのものを扱って来たし、色々なものを観てきているから、オマエごときの作品なんてチラッと観るだけで全部分かっちゃうんだよ」という態度をあからさまにする人が多いです。

しかし、こちらとしては、上記の辻が花という染め物なら「今言われている辻が花というものと、本物の桃山から江戸初期の辻が花の作り方の違いを説明しようとしている、そしてその作者さんは昔のものからどのようにご自分のスタイルを構築したかという深度で説明しようとしている」わけですし、友禅なら「江戸初期の天然染料染による絞り+顔料による糸目友禅と、現代本物と言われている真糊糸目友禅の違いなどを説明したい」わけですが、しかしその作者当人ですらそこまで深堀りして作品作りをしておりませんし、その違いを知らないのですから、私がそういう事を社員さんへ説明したとしても、そんな内容は興味すら持ってもらえません。

多少興味を持った人でも話を聴いた後に「そんな話は今まで聞いた事が無いから、オマエの思いつきを言ってるだけだろ?」という具合に、聴いて損したとでも言わんばかりの態度の人もおります。

少し説明して相手が興味を持たない場合は、説明は軽くする程度で止めます。

忙しい仕事の最中に手を止めさせられて下らない話を聴かされていると感じた社員さんたちにしてみれば、社長命令だとしても迷惑以外の何者でもありません。ですからそんな社員さんたちや社長さんに怒りを感じた事はありません。本当に良くある事なので・・・正直言って最初は腹も立ちましたが、段々と彼らから私を観れば当然そうなるよな、と理解出来るようになりました。

逆に、とんでもないレベルの専門家程、独自の見解を話すと「おお、面白い話ですね!是非聴かせて下さい!」と興味津々で、合いの手も上手く、ついつい喋り過ぎてしまった後に、実はその人はその道の専門家だった、という事もあります。

私自身はそれを何度か経験しております。それはそれで怖いですね。しかし、そういう場合は後にその達人と親しくなれてありがたい。


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