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北海道ひとり旅 キャンプツーしてみた 27

9月2日 4:30
太陽が上らないうちに、起床。あたりはまだ真っ暗。
今日はこれからポン山〜姫沼へ、のトレッキングをする。昨晩握った塩むすびをウエストバックに入れ、ガイドさんが運転してくれる車に乗り込む。
登山の登山口に向けて出発した。

4:50
登山口がある利尻北麓野営場に到着。登山者はここから利尻山を目指して登るのだ。
支度を整え、登山開始。ちょうど日の出の時間で、空も明るくなった。昨晩修理したトレッキングシューズは何とか接着したようだ。見た目はとんでもなく悪いが、途中で靴底が取れるよりはマシだろう。
5:00頃から歩き始めると、私の他にも次々と登山者が登ってくる。

林の中をしばらく歩くと、まず甘露泉水がある。登山者は、ここで水を汲んでから、山頂を目指すというわけだ。
甘露泉水があるのはわかっていたが、登山口からこんなに近いとは思わず、出発する時に水筒に水を満タンに入れてしまった。
しまった、甘露泉水を飲みたい…
水筒の水を一気飲みして(それでも飲みきれない分は捨てて)水筒に甘露泉水を汲み入れる。
湧き出る水をそのまま飲んでみると、冷たくて甘い。ものすごく美味しい!
ついでにおにぎりも食べて、腹ごしらえ。トレッキングに向けて、エネルギーをチャージする。
その間にも、何人もの登山客が通り過ぎていく。

甘露泉水から少し歩くと、利尻山とポン山の分岐点に出た。
ほとんどの人が、利尻山の方へ進んでいく。ポン山へ向かうのは私1人だけ。
前日、ガイドさんから利尻島にはヒグマはいないと聞いていたから安心できたけど、ポン山への登山道が背丈の高い木や熊笹が茂っている道で、ちょっと不気味。所々、草生かき分けながら進んで行く。
もしかしたら熊が出るかもしれない、という状況だったら絶対に1人では歩きたくない。むしろ、出てこないと分かっていても心細く、不安になってしまう。
他に誰も歩いている人がいないし、完全に独りぼっち。緩やかな上り坂を黙々と登っていく。

木々が茂る登山道を進んでいくと、大ポン山と小ポン山への分岐が出てきた。小ポン山へ行こうか悩んだけれど、まずは大ポン山へ向かうことにした。

分岐を大ポン山の方へ進むと、登山道の風景はガラッと変わり、林の中の平坦な道を歩いていく。
少し進むと森を抜け、視界が開けた。山頂だ。目の前には利尻山がそびえ立つ。

先客が1人いた。手前のベンチでコーヒーを淹れている。挨拶をすると、

「1番先まで行くといいよ」

と言われ、登山道の突き当たりまで行ってみると、本当に良い眺めで。目の前左側には利尻山、右側にはその利尻山の影が逆さまに映っている。その先の海には礼文島が見える。この、影の逆さ富士を通称「影ポン」と呼んでいるらしい。

いろいろと教えてくれた先客のこの男性、利尻島に住んでいる方だそうで、この日で今年100回目のポン山登山だと言っていた。(腕に腕章を付けていたので、ガイドか何かをやっているぽい)仕事前に、ポン山登山をしているというから驚き。
しかも、コーヒーのお裾分けまでいただいてしまった。ありがたい。山頂で飲むコーヒーほど美味いものはない。

標高444mからの景色。天気は晴れ。青空が広がる。
利尻山の山頂もこの日はバッチリと見え、最高のロケーションだ。目の前の雄大な自然に言葉を失い、しばし見入ってしまう。
利尻山には登れなかったが、こうして遠くから眺めることで、すごく素敵な景色に出会えたので良かった。

いろいろと親切にしていただいたこの男性の名は熊さん。
「利尻山には熊が出るらしい」って冗談で言われているそうだ。
確かに熊(さん)が出るのは間違っていないが、聞いたら一瞬びっくりしてしまうだろう。
お茶目なところが、ザックにクマのぬいぐるみを付けているところ。名刺代わりの人形がかわいい。
植物にも詳しく、訊ねたらいろいろと教えてくれた。行こうか悩んでいた小ポン山も、
「展望はないから行かなくて良いよ。けど、花の時期は、一面に花が咲いているからその時は行った方が良い」
と、教えてくれた。

「この時間から姫沼までトレッキングしたら、時間的にちょうど良いね〜。早朝の方が湖面が静かで、きれいに逆さ富士が見えるんだよ」

そう言って、熊さんは颯爽と歩いて行った。日課のように登っているだけあり、下りのペースも早い。あっという間に見えなくなってしまった。

ポン山から戻るように登山道を下ると、途中に姫沼へのトレッキングコースの分岐がある。
姫沼まで、そんなに時間がかからないのかなって思ったのが大間違い。ここからが修行の道のりだった。

草が茂る森の中の道を進む。まさに草ボーボー。場所によっては道を塞ぐように草が伸び、かき分けなければ進めなかったり。この道を歩く人がいるのかと心配になるほど。

それでも最初の方は、動画を取りながら歩けるくらいの余裕があったが、しばらく歩いても風景は変わらないし、動画を取るのはやめ、歩きに集中することにした。

そもそも、私の大きな勘違いだった。ポン山から姫沼までは(正確には分かれ道のところ)徒歩120分のコースなのに、なぜかもっと近くに姫沼があると思い込んでいた。なので、この時の私は結構歩いたつもりでも、実際はそんなに進んではいなかったのだ。このトレッキングコースの本領はこれから…ということも、この時の私はまだ知らないわけで。

このあと、必死に歩くことになるのだ。


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