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45. 「アスリートの価値」という言葉について思う事

皆さんこんにちは!三浦優希です。
今日お話させていただきたいことは、「僕の考えるアスリートの価値」についてです。ここ最近、色んなところで多くの方々が「スポーツ選手の価値をあげたい」という言葉を口にすることが増えた気がします。ソーシャルメディアの普及により、その数はより一層増加していると個人的に感じています。

先日、KEIO SDM(慶應大学大学院システムデザインマネジメント学科)が主催する SPORTS X Leaders Program(人材育成プログラム)の最終報告会がありました。私は、第1期生のメンバーとしてこちらのプログラムに昨年の夏から参加させていただいていました。8月後半には日本を離れてしまったため、後半は授業に参加させていただくことができなかったのですが、ビジネス界やスポーツ界ですでに活躍されている同期の皆さんをはじめ、優秀な講師陣の方々など、素晴らしい環境に恵まれ本当に多くのことを学ばせていただきました。SPORTS X Leaders Programについては、第0期の卒業生として一緒にプログラムに参加してくださった@Tetsuro Hayashiさんが大変わかりやすくまとめてくださっているので、下記をご覧いただけたらと思います。(とても優しく、大人の魅力あふれるダンディーな方です!)

前置きが大変長くなりました。先ほども少し述べましたが、私は現在アメリカにいるため、先日行われた最終報告会には参加できませんでした。しかし、チームの最終発表に先立ち、自分自身が今「アスリートの価値」というものについてどう考えているか意見を述べさせていただく機会がありました。それは、今まで何となくでしか捉えていなかったこの言葉について初めて深く考える時間となりました。実際に文字に起こす過程を通して、色々と自分の想いが湧き出てきたので、今日はそちらを皆さんに見ていただきたいと思います。

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僕が「アスリートの価値」と聞いて、一番最初に思うこと。それは、競技を行い高みを目指して挑戦するということは、一見自由に見えますが、それには同時に責任が伴うということです。自由=責任であると感じています。

こう考えるようになったのは、高校時代からお世話になっているあるトレーナーさんからの言葉がきっかけでした。

「夢を追う者は、同時に人に夢を見せる存在でなければならない。」

何がきっかけでこのような話に発展したかはしっかり覚えていないのですが、この「夢を追う者の使命」についての話は当時の私に強烈に突き刺さりました。そのころまでは、ただ自分が「なんとかゴールに近づけたらいい」というような意識でしたが、この言葉を聞いてからは自分の中で目標に向かって挑戦することに対する考え方が大きく変わりました。

もちろん、何よりも自分のために競技に取り組むということは当然です。他の人のためにここまでアイスホッケーに真剣に取り組んできたわけではありません。これからもそうです。スポーツに限らず、全ての物事において僕は、自分のことを「誰かのため」にすることは少々危険だと考えています。これは決して、応援してくださる方々を遠ざけているわけではありません。ただ、「他人の期待を満足させなければ」という思いはいつしか重圧に変わり、時に本人を苦しめることになると思っています。まずは、誰よりも自分のために戦う。これは一つの前提として捉えていただければ幸いです。

それでも。
海外で生活を始めるようになってから、もっと言うと、自分の所属するレベルが高くなればなっていくほど、これからの世代に、今自分が追い続けている夢とそのプロセスを共有していく必要があると強く感じるようになりました。

少し前に書いた、「25. ノブレス・オブリージュという考え方」でも少し似たようなことを話しましたが、小さい頃から環境に恵まれ、何一つ不自由なくアイスホッケーをここまで続けることができ、しかも、海外挑戦という決して簡単には実現できないことを高校生の段階からさせてもらうことができた私は、「自分の能力に対する対価」だけでは済まされないほどの恩恵をずっと受けてきました。自分が貴重な体験をすればするほど、「この感覚を味わう若い選手たちがもっともっと出てきてほしい。」と感じるようになりました。

ただ、最初にも述べましたが、勘違いしてほしくないのは、「周りに憧れを与えるために僕が何かをする。」というわけではないことです。例えば、「もっと自分を見てほしいからこんなことをしてみよう。」「どうすればもっとみんなに気に入ってもらえるかなあ。」とかを考える以前に、まずは自分が誰よりも夢を持ち、ゴールに向かって走り続ける姿勢こそが一番大切だと考えています。その、ひたむきに挑戦する姿に人は心を打たれ、「自分もいつかこうなりたい!」と感じるようになるのではないでしょうか。これが「夢を与える」ということだと思います。

僕もそうでした。小さい頃に外国人を相手に戦う父の姿や、チェコに渡ってから出会ったNHLのスーパースターたちの圧倒的努力など、そういった姿を見て「かっこいい・・俺もこうなりたい!」と夢を与えられてきました。「アスリートは人を魅了する」といわれるのには、こういったところに要因があるのではと思っています。

そして、それは決して競技中の姿だけではありません。他の人との接し方や、物や環境に対する態度など、いわゆるオフ・ザ・ピッチの部分でも「アスリートとしての品格」はとても重要です。僕で言えば、世界トップを目指して競技に取り組むのはもちろんですが、それ以前にアイスホッケー選手という枠組みを超え、一人の人間としての気高さを持ち続け、他人や物に対するリスペクトなどを体現することが最優先だと考えています。

最初に話した「責任」という内容と重なってきますが、社会でのアスリートの価値を上げたいのならば、まずはアスリートが社会に対して存在意義を提供しなければいけません。 「アスリートの価値を高めたい」や「このスポーツはマイナーだから…」という話をよく耳にしますが(アスリート自身が社会からの評価・価値が低いと嘆いていることもよく目にします。)、価値というものはgiveされる(与えられる)ものではなくて、earnする(自分で得る、掴み取る)ものだと思っています。アスリート自身が、周り・他人に価値を上げてもらうという姿勢ではなく、まずは自らの行動で社会に自分自身を、そしてそのスポーツの存在意義を証明していく必要があると感じています。夢を追うということを「させてもらってる」以上、その覚悟と責任は常に求められます。

アスリートはスポーツ界のみならず、社会のロールモデルにならなければいけない存在だと思っていますし、それこそが「アスリートの価値」に繋がると考えています。スポーツだけに集中していればいいという考えは僕の中では間違っています。もちろん競技に対して本気で取り組むことは大切ではありますが、他競技を始め、スポーツ以外の世の中のさまざまな事柄に自ら触れ、その存在に対して感謝し、リスペクトをするということが大切だと思います。個人的な意見としては、アスリートだからといって、なんでも優遇されたりするのはお門違いだと思っています。 

ここで少し、日本とアメリカにおけるスポーツ選手の立ち位置や存在感の違いについて述べたいと思います。あくまで私の主観ですが、競技レベルが上がれば上がるほど、先ほど述べた「アスリートとしての責任感」、「夢を追う者の使命」というものを理解している選手が圧倒的にこちらには多いと感じます。特に現在所属するNCAA D1やトップジュニアリーグなどに所属する選手たちは、社会と自分のつながりについて触れる機会がかなり多いと思ってます。競技レベルが上がるにつれて、いわゆるバカなことをやる選手なんていなくなるし、例えば僕の経験で言えば、チーム内の人種差別なども一気に減ります。いくら競技レベルが高くても、人間性というものが欠けている選手は、上には行けません。

もちろん、日本国内におけるスポーツ選手の立ち位置が他国より遅れていることに関しては、構造システムに問題があることは仕方ないかもしれません。それもこれから変えていくべきことです。でも、そもそもそれ以前に、競技者・アスリートとしてのマインドセットにも大きな違いを感じます。

繰り返しますが、僕は、アスリートは「いつのまにか人に夢を与えている存在」にならなければいけないと強く感じています。work ethic(労働倫理)という言葉をよくチームのコーチが使うのですが、要は「仕事をする(アイスホッケーをする)ということは、自分にとってどういう意味をなすのか?」を問うことだと感じています。

「なぜアイスホッケーをするのか」という命題のもとで、どのような態度でその競技に望むのか。アイスホッケー選手としていたいなら、普段の行動はどうあるべきなのか。そういったことを考えさせられる機会がとても多いです。

最近、世の中で「なんとかスポーツ選手、スポーツの価値を上げよう!」と奮闘されている方々を目にする機会が増えてきました。皆さん本当に素晴らしい取り組みをしてくださっています。その一方で、私たちアスリートは、そういった方々に何もかも任せきりで良いのでしょうか?「価値を上げてもらう」というスタンスで良いのでしょうか?

僕は違うと思います。先ほども言いましたが、価値というのは、つかみ取るものです。そしてそれは、自分ではなく周りの人が決めることです。もし、「自分の価値を上げたい」と思うのであれば、「人に求められる存在」になる必要があると思うのです。そして、その姿勢こそが、いつかスポーツ界という小さな枠を飛び越えて、アスリートが社会に対してプラスαを提供できるきっかけにつながると思っています。

僕もこんな偉そうなことを長々と書いていますが、まだまだ何も成し遂げていません。僕がこれから世の中に対してどんな事を提供していけるのかは分かりませんが、こういった文章を書きながら、今一番大切なことは、「この海外挑戦を全力でやりきる」ということに尽きると再認識しました。

ソーシャルメディアはあくまで、その「成長過程を届ける」ためのツールです。まずはリアルの世界で、本気で勝負します!そしてその姿が、いつしか自分より若い世代など、周りの人々に「夢を与える」ということにつながると信じています。

今回も、最後まで読んでくださりありがとうございました。

三浦優希


ちなみに、一番最初に書いた「夢を追う者は、同時に人に夢を見せる存在でなければならない。」という言葉をくれたトレーナーさんは現在、世界でもトップクラスに位置する競技チームの、日本代表スタッフをやられています。全く出世したなあ。笑

そして、氷上にいるとき俺はいつも笑ってるらしい。(自覚なし)

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三浦優希 Yuki Miura

1996年生まれ。アイスホッケーをやっています。高校2年生の時に早実を離れ海外挑戦を始めました。チェコ、アメリカを経て現在はNCAAのDivision 1に所属するLake Superior State University に通う学生アスリートです。

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