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174. ミスしていい選手、ミスしちゃいけない選手

今回は、「ミスしていい選手、ミスしちゃいけない選手」の違いについてお話ししていきたいと思います。

競技スポーツにおいて、ミスは誰にでも起こりうるものです。しかし、そのミスに対する評価は実は選手によって大きく異なります。ミスをしても許される選手と、ミスをしてはいけない選手が存在するのです。

この違いはどこから来るのでしょうか。そして、ミスをしてはいけない選手はどうすればミスをしてもいい選手になれるのでしょうか。今回は、私自身の経験も交えながら、このテーマについて考えてみたいと思います。

ミスしていい選手とは

まず、ミスをしてもいい選手とはどういう選手でしょうか。これは、一言で言えば、監督やコーチから信頼を置かれている選手のことです。例えば、チームのトップスコアラーやいわゆる点取り屋と呼ばれる選手などです。

このような選手は、試合の中で2-3回ミスをしたとしても、ほとんど試合ではそのまま使われ続けます。

なぜなら、そのミスがあったとしても、それを上回るパフォーマンスを日頃から残しており、実際に監督やコーチからもその点を信頼しているからです。

つまり、ミスをしてもいい選手とは、ミスをカバーできるだけの能力や実績をすでに持っている選手のことです。

ミスしちゃいけない選手

では逆に、ミスをしてはいけない選手とはどういう選手なのでしょうか。これは、先ほどとは反対に、コーチから絶対的な信頼を得られていない選手のことです。

普段あまり試合に出ていない選手、レギュラーではあるけど目立った活躍はしていない選手、試合に出ている回数が他のトップメンバーと比べたら少ない選手、いつも控えでたまに試合メンバーに入る選手、コールアップされたばかりの選手、などが該当します。

このような選手は、ミスが許されないことが多いです。相手にパックを取られたり、ゴールチャンスを外したり、守りの場面で間違った動きをしたりすると、それが理由で試合に出られなくなる、ということがよくあります。それも、たった一回のミスで。

つまり「多少のミスは目を瞑る」ほどの信頼を得られていない段階においては、試合中の小さな間違いが、自分の出場時間を大きく削ることになる命取りになってしまう可能性があるということです。

ミスしてもいい選手になるには

では、ミスをしてはいけない選手は、どうすればミスをしてもいい選手になれるのでしょうか。

大前提として、これは、決して簡単に乗り越えられる壁ではありません。なぜなら、一度つけられたイメージやレッテルを外すというのは、とても難しい作業だからです。

ミスをしてはいけない選手たちは、ミスしたらさらに試合に出られなくなるという恐れから、プレイが消極的になってしまったり、最低限のプレイしかせずリスクを冒さない傾向にあります。

しかし、これでは、本来の評価を上げることはできません。評価を上げるためには、ガンガンリスクを冒していくしかないのです。

私の好きな言葉に「ここから出たいならここで戦えよ」というものがあります。これはB'zの稲葉浩志さんが歌っている歌詞の一部ですが、私は本当にその通りだと思います。

この場から出たい、より高みにいきたいと思ったら、まずはその場で戦って這い上がっていかないといけないのです。ミスをしてはいけない選手たちこそ、リスクを犯さないといけないのです。


もちろん、失敗したらまた落とされる可能性とあります。でも、挑戦して「おっ、こいつはやれる」と見せつけない限り、真の評価が上がることはありません。危険を冒せるかどうか、そこが自分との戦いになるのです。

リスクを犯すタイミングについて

一方で、リスクを冒す上で理解しておくべき大事なポイントが一つあります。それは、闇雲にリスクを冒し続けるのではなく、「適切なタイミングでトライする」ということです。

自分のミスで失点をしてしまう場面と、自分がトライすることで得点が取れる可能性のある場面であれば、どう考えてもリスクを取るべきは後者です。
リスクを取るべき時間帯や試合状況はしっかりと冷静に把握すべきかと思います。

ミスをしてはいけない選手たちは、言い換えれば、最初はあまり期待度は高くないわけです。良い意味で、その期待度を覆えすようなプレイをできた時のインパクトは大きいでしょう。

特にこれはアメリカに来てからよく感じることですが、たった一回の、たった数秒の、たった一瞬のプレイで、誰もがヒーローになれる可能性があります。

一回のプレイでいいから、見ている人たち、コーチやチームメートを驚かせるようなプレイができると「あれ、あいつってこんなところにくすぶっている存在じゃないんじゃない?」という見られ方が生まれ、そこから信頼を積み重ねていくことができれば、最終的にはミスをしてもいい選手になれるのだと思います。

最後に

そもそもの話、最初は誰しも「ミスをしちゃいけない選手」です。どんなに偉大な選手で、どんなミスも許されるような実績を残している選手も、元々は自分の居場所を作り始めるところからスタートしたはずです。

そこから小さな勝利、信頼、結果を積み重ね続けた結果、絶対に揺らぐことない圧倒的ポジションを手に入れられるようになる、ということです(もちろん厳密に言えば、スポーツにおいては、ポジションの安定や安全はどこにも保証されていない競争の世界ですが)

試合に出れていない選手からすれば、「あの選手はミスしても試合で使われ続けてずるい」という感情を持ってしまうことがあるかもしれませんが、それは、その選手がこれまでの時間で積み重ねてきた信頼の副産物です。

だからこそ、他の選手の起用のされ方やチーム内でのポジションに対して文句を言うのではなく、常に前向きに、自分自身の成長と向き合って、一日一日を大切に全力で過ごすことで、自分の地位を確立していくことがチームスポーツでは求められるのだと思います。そして、これがスポーツ挑戦における、ものすごく面白くてやりがいのある部分だと思います。

最後にこれまで言ってきたことを全否定するようなことを書きますが(笑)、僕は、今までもこれからもずっと「ミスをしちゃいけない選手」だと思います。得点やアシストを毎試合取れるような選手じゃないし、ずば抜けた実力があるわけでもないです。

だからこそ、この競争の世界で必死に生き残っていくために、「ミスしちゃいけない選手」なりの戦い方、リスクの取り方を、自らのアイスホッケー人生を通して体現していけたらと思っています。

逆に言えば、「安定」を求め始めた時点で、選手としての成長は止まってしまう、と考えています。

毎日が勝負のこの世界、常に挑戦者としてのマインドセットを、今後も持ち続けたいと思います。

今日のお話は以上です。今回の内容が面白いと感じた方は、ぜひSNS等でもシェアしていただけると幸いです。(全力リツイートさせていただきます!)今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

三浦優希

P.S 
"CAGE FIGHT"はとってもかっこいい曲なので、ぜひ聴いてみてくださいね!



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