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薪能はわざわざスペクタクルにしなくても幻想的

大阪といえば大阪城、グリコの看板が2大観光スポットのようにいわれているが、天王寺にある「四天王寺」も加えてもらいたいくらい歴史ある聖地。

四天王寺は1430年前、かの聖徳太子によって建立された日本最古の官寺。大型台風や大阪大空襲でほぼ全滅したものの昭和54年ころにほぼすべて再建。現在に至る。

四天王寺の歴史

再建か・・・とあなどるなかれ。大阪市内ど真ん中にありながら五重塔がどどんとそびえる姿はなかなかの迫力。

寺周辺には甘味処やこじんまりとしたカフェもあって風情もある。

そんな聖徳太子ゆかりのお寺で聖徳太子に縁のある新作能「桐葵」がなんと薪能+プロジェクションマッピングでみられるイベントが開催されるとのことで、これは見逃してはならぬとチケッティング。

人気があると思いきやさくっと入手できた。あれ?そんなに皆さん興味ない?

しかも、「土蜘蛛」も半能の形式でみられるという。半能は見たことがないがクライマックスの蜘蛛の糸の乱れ飛び「シャ~」がみられるなら面白いかもと思っていた。

何がいいって四天王寺を舞台にした薪能。

薪能の舞台が用意されている

夕焼けに映える五重塔が美しい。しかも、普段はこの時間帯に入れないので特別感満載。


残念ながら上演中の撮影は禁止とのことで撮影できなかったのだが、横にいた外国人カップルのお兄さんがめちゃくちゃ撮影をしていて、誰も注意しないもんだから

「あら?わたしもいい?」

と思わなくもなかったが、そんなことしたら日本人としてのモラルはどうなの?となるのでぐっと我慢した。

一言でいうといい。いやかなりいい。
今回はスペクタクル薪能 in 天王寺

とのお題。

薪能とは、夕方から夜にかけて薪をたいて行われる能のこと。
薪に火をつけた瞬間、ボオウ~という音と共に火がゆらぎ、それだけで幻想的な雰囲気が漂う。

スペクタクルとは壮大な見世物。

おそらくプロジェクションマッピングを用いて、伝統とテクノロジーの融合としたのだろうが、薪能は薪というアイテムだけで別世界にいざなってくれる。

しかも、能舞台は五重塔の前で、プロジェクションマッピングはその隣の金堂の白い壁面に映し出されていたので、能をみているときは金堂が見られない。能とプロジェクションマッピングは別々に見ないといけないのだ。

プロジェクションマッピングは、スクリーンとなる対象物の凹凸に合わせたデザインや、立体情報・表面情報を持たせ、投射の際にぴたりと重なり合うように調整するもの

プロジェクションマッピング協会

五重塔にもマッピングされていたのだが、ただ光が当たっているだけ。五重塔の赤が活かされるような濃い色を多用すればまた違ったかもしれないが、ただ何か投影しているなというくらいの色だったのと、特に五重塔の凹凸にあわせて何か仕掛けている感じもなかったため、「プロジェクター?」と感じたものだった。

とはいえ、演目自体はものすごく見ごたえがあって、秋の夜長の貴重な体験だった。

半能のクライマックス部分だけ見られればいいかと思ったが、いきなり出て来て蜘蛛の糸をシャーシャー繰り出されると、光の中で舞う糸は美しかったものの、どうも盛り上がりにかける。

やはりストーリー構成は大事だなとしみじみ感じた。最近、映画やドラマを1倍速で見る人たちが多いと聞くが、倍速で見ると、独特の「間」が感じられなくて面白くなくなるのではと思う。彼らの言い分によれば、最後のおちさえわかれば面白いのだという。ストーリーにあわせた音楽も1倍速になることで風情が半減しないだろうかと老婆心ながら言いたくなる。

また、インバウンド需要の回復、オーバーツーリズムとニュースでよく聞くが、スペクタクル薪能にも外国人観光客が、ゆきんこ目視によれば1/3はいたんじゃないかと思う。事実、アナウンスも日本語のあと英語で行われていたので、比率は間違いない。

たまにはゆっくりと進む能を薪の火のゆらぎとともに堪能するのも悪くない。おそらく今はやりのプロジェクションマッピングを取り入れることで若者の認知をあげようと考えたのかもしれないが、見渡してみる限り、外国人と60歳オーバーの高齢者、40~50代前半の人数だけは多い団塊ジュニア世代が占めていたので、今後もこの層を狙い、特に今風にしなくてもよいのではなかろうか。テクノロジーを融合しなくていいので、一般的な薪能をいろいろ開催してもらいたい。

秋の夜長の楽しみが一つ増えるから。




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