ミュージカル「ダーウィン・ヤング 悪の起源」観劇感想

 こんにちは、雪乃です。今日はシアタークリエまで行ってきました。

 観たのはミュージカル「ダーウィン・ヤング 悪の起源」。私にとっては初めての韓国ミュージカルです。

 今回チケットを取ったのは韓国ミュージカルが観てみたかったからというのもあるのですが、それ以上にタイトルロールであるダーウィン・ヤング役が渡邊蒼さん(大東立樹さんとのダブルキャスト)だったから。
 渡邊蒼さんといえば、私の中ではミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳」のバット役だった役者さん、というイメージです。バットがもう、めっっちゃくちゃ良くて。原作から抜け出てきたかのようなバットを拝見し、当時の感想に私は「とにかくこの方で主演が観たい」と書きました。
 そんなことを書いていたら、本当に実現した渡邊蒼さんのミュージカル初主演となる公演。これはもう絶対に行かねば!と迷わずチケットを取りました。いやもう本当に、渡邊蒼さんが0番に立っている姿をこの目に焼き付けることができて感無量です。

 「ダーウィン・ヤング」、公式サイトでストーリーを読んだ際には人間関係が全くわからず「これは当日観て理解できるのか……?」と不安になりましたが、実際に観たらまったくそんなことはなく、スッと理解できる脚本と演出でした。60年前、30年前、そして現在と3つの時代を行き来しながらも、視線や感情の動線がしっかりと作られていたので混乱することなく観ることができました。その一方で、わかりやすさ故に地獄が飲み込みやすくなっていてしんどかったんですが……。

 「ダーウィン・ヤング」の舞台となっているのは、厳格な身分制が敷かれている架空の都市。名門校プライム・スクールの生徒である16歳のダーウィン・ヤングを中心に、父ニースや祖父ラナーをはじめとした親子3世代の人生と罪が絡み合う物語です。

 物語の軸をなすのは、30年前に起きた殺人事件と、60年前に下級の地区に住む住民たちが起こした「12月革命」と呼ばれる暴動。殺人事件の真犯人や革命のリーダーだった少年の正体を追うミステリー要素もあり、物語が緊張感を保ったままノンストップで展開されていきます。

 物語はサスペンスフルで非常に面白いのですが、その核にあるテーマは「罪」。親子3世代がそれぞれの罪と向き合い、苦悩し、罪が連鎖していく苦しさ。まるでむき出しの神経をそのまま苦しみに満ちた物語に直に浸したような、忘れがたい痛みを味わうことになる作品です。今まで観た演劇作品の中でも最も心が痛くなった作品かもしれません。

 しかし、私は痛みに目を背けない物語が好きです。痛みを真正面から扱う虚構があるからこそ、現実世界で感じた痛みを物語に託して、涙と一緒に外へと押し流せる。痛みに満ちた物語に浸ることこそ、私にとっては最高のストレス発散。ということで、カーテンコールはむしろ晴れやかな気持ちで迎えることができました。

 「ダーウィン・ヤング」は痛みに満ちた罪の物語ですが、苦しさばかりでないのも魅力です。名門校のプライムスクールを舞台に描かれるダーウィンとどの同級生レオの友情は、普段教師たちに抑圧されているからこそ、自由を謳歌しようとする瑞々しいエネルギーに満ちています。若さ故の万能感が放つ溌剌とした青春のきらめきは、「ダーウィン・ヤング」の世界に間違いなく光をもたらしていました。……まあこの光こそが2幕でより深い闇を生むのですが。

 ダーウィン・ヤングという、柔らかな魂を持つ1人の少年が、父の犯した罪を知り、やがて自らも父と同じ罪を犯す。そこ至るまでの凄絶で残酷な過程を演じ抜いた渡邊ダーウィンが、もうひたすらに凄すぎました。終盤はずっと泣いてましたね。
 事件の目撃者になってしまったのではなく、自分がダーウィンの犯した罪の当事者になってしまったかのような感覚は忘れられません。息が苦しくなるほどに泣いたのは久しぶりです。
 
 そして触れておきたいのがやはり演出。舞台セットにプロジェクションマッピングで背景を映し出して異なる情景を描くというシアターGロッソのキングオージャーショー方式でした。観ながら「Gロッソで観たやつ……!」とか考えてました。

 観劇後すぐに原作を購入しまだ全部読み終わっていないのですが、舞台版はカットしたシーンはありつつもかなり綺麗に編集されていると思いました。しかし主人公のダーウィン・ヤングに関しては、渡邊ダーウィンは原作以上に等身大の少年として作り込んでいる印象です。同級生のルミに恋心を抱くところは原作通りですが、ちょっとした仕草から立ち姿、授業を受けているときの姿勢に至るまで、より一層普通の少年として血の通った姿を見ることができるのは舞台ならでは。
 舞台ならでは、といえばやっぱり外せないのが群衆。多数の群衆が登場する12月革命のシーンは、視界が焼かれるような感覚を覚える照明と相まって大迫力です。

 そしてミュージカルと言えば音楽。物語の幕を開ける「プライムスクール」は、宗教曲を思わせる荘厳な前奏と厚みのあるコーラス、そして何より主人公ダーウィンの伸びやかな歌声により、一気に「ダーウィン・ヤング」の世界に引き込まれました。
 ダーウィン、レオ、そしてプライムスクールの生徒たちによる「自由」は、エネルギッシュなダンスナンバー。そして3世代の宿命が絡み合う「青い目の目撃者」は、聞いていて最も痛みを感じるナンバーです。生バンドだったので奥行きもあり、追い出しに至るまで素晴らしかったです。
 
 なお原作小説は全部で606ページあります。手元に紙書籍であるのですが、本当に嘘みたいに分厚い。すごい。ウィキッドの原作の厚みを思い出します。現在124ページまで到達したので、早く全部読み切りたいです。

 観た直後はもっといろいろ書こうとしていたんですが、今になって「何もわからん!」となっています。とにかく「あ~~~~良かったな~~~~~」みたいな感想しか出てこない。チケット取って良かったです。

 なんかまとまらない感想になってしまいましたが、眠いので寝ます。本日もお付き合いいただきありがとうございました。

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