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ただ、具合が悪いだけ

私は赤ちゃんの頃から体調を崩すことが多かった。

ある時は離島からヘリ搬送になるところをあわや回避した。
そんな事情もあるんだろうけど、「健康が第一、健康一番」というセリフを親からも兄弟からも聞いたことはない。

そして、私が小学校に入学して間もなく。
給食を食べた直後にこぽっと戻してしまうことが増えた。

小学一年生には体調不良をうまく伝えるすべはないし、それが不調なのかもよくわからなかった。
ただ、体かだるくて学校に行くのがしんどい、体を動かすことや身動き1つするのもしんどい。
だから授業中も、自宅で書き取りをしているときも、本を読んでいるときも、首や肩、腕を動かすことすらはばかられる。
誰かに怒られるわけではないけど、体が?脳が?「動いちゃいけない」と信号を発していたみたいだった。

そんなだと肩も首も凝り固まって、頭痛で寝込み、よく吐いた、小学1年から3年生の話だ。

他にも、トイレに行く回数が極端に少ない(1日1回~2回)、汗はかかずいつも皮膚はひんやりしている、極端に動けない。体育のときなんかは誰よりもできなくて特別メニューを出されてもでもできない始末、これでも幼稚園のときは活発だったのに。
授業でも身じろぎもしない。

ただ、その頃は勉強はできたし、本を読むことが何より好きだったから、自分としては特に不便も感じていなかった。

ただ具合が悪いだけ。

でも病院で検査しても一般的な検査では特に問題はなかったから、「学校でいじめられて行きたくないんじゃないか」「親が心配し過ぎだ」といつもお医者さんから怒鳴られて病院から帰ってきた。
それでも、母親は子供が具合が悪いと言うし、何か変だという感が働いていたから、定期的に病院へ連れて行ってくれていた。


4年生になって、保健の先生から、成長曲線に異常が見られるので病院へ行って成長ホルモンの検査を依頼してくださいと言われた。

病院に行った結果、予定より早く呼び出しを受けて、入院になった。
検査と投薬がすぐ必要だということで。

私からするとえ?今更?とも思ったが、このままでは知能の発育にも問題が出てくるという話だったので、3ヶ月の入院長すぎる。
ピアノの練習ができないことが一番の気がかりだった。

まぁ、ようやく見つかって、現在に至るまで、生涯ホルモン剤を飲まなければいけない状況なのに、「今まで怒鳴って、邪険にしてすみません」位は謝ってほしかったものだ。子供ながらに大いに傷ついていたから。


そんな子供時代を過ごしてきた私は「ただ、具合が悪いだけ」というものに診断名や治療がないと言われるのは普通のことだと思ってきた。

ほんと、ただ、具合悪いだけ。

でも、その具合の悪さは、ある時診断名がついたりする。

慢性疲労症候群ME/CFSのときだってそうだった。


日本の医療は専門がとても細かく分かれている。
だから専門でない体調不良は何が問題で起こるのかがわからないことって結構あるのだ。

子供時代の具合が悪いには、橋本病(慢性甲状腺炎)で甲状腺機能低下症という名前がついた。
この病は実はものすごくメジャーな病気だ、成人の女性にとっては。色々私も調べたりしたし、お医者さんと話がよくできる職業についたりもしたから話を聞いたけれど、小児の場合の甲状腺機能低下症はごく稀。甲状腺機能低下症が見られるのは中学生以降と書かれていた文献もあった。遺伝性のものや生まれたときから甲状腺機能低下症がある場合もあるけれど、新生児の病気のスクリーニングで必ず行っているはず(でしたよね?)。
成長ホルモンが出ていなければ、成長はおろか代謝に影響があるので、発汗がないとか排泄がないとかで、すぐにわかる。


メジャーな病気でも、多いはずの年齢層ではなく発症がごく稀という場合は、私のケースみたいに診断に4年もかかったりする。これは通常がどうかもわからない、伝えられない年歴のならなおさら起きやすいケース。


今ではメジャーになった疾患も、昔は名前もなく、気のせい、本人がだらしない、なんだかよくわからない、でもなにか具合が悪い、という状態で治療を受けられなかった人たちがいる。
多くは神経疾患だったりすると思う。
研究が進んだからこその診断、治療がある。


いま、ただ具合が悪い、でも病名はない。

という人も、どうか症状をコントロールすることに主眼を置いて、医師とよく話をしてほしい。

そこにある「具合が悪い」はあなたにとって紛れもない事実。

名前はまだない、でも治療が必要。

そう思って病院にかかってほしい。

具合が悪い人は診断名が欲しいわけではなく、具合を治してほしいのだ。
その具合の悪さを治療するために診断も必要。
治療には診断名がついて回るけれど、その診断名が先ではなく、必要な治療をするためにつける診断名もある。
(これは言ってはいけないやつ??)


具合の悪い人が治療を受けられる状況になりますように。

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