米中貿易戦争は、中国の成長を叩き潰す戦い

 トランプ大統領は、中国からの輸入に高関税をかける理由として、「雇用をアメリカに取り戻す」と言っていた。私は、それがまともに受けていたので、「高関税をかけたところで製造業の生産や雇用はアメリカに戻らない。だから、高関税政策はまったく無意味」と考えていた。
 しかし、中国の成長を叩き潰すという点から言えば、高関税は確かに有効な方策だ。
 とくに、外資が生産拠点を中国からインドや東南アジアに移す動きが本格化すれば、中国にとって大変大きな痛手になるはずだ。

 ただし、このことは、グローバルサプライチェーンの最適な姿からの逸脱を意味するわけで、世界の企業にとっては、余計なコストを負担させられることになる。日本の企業もそうだ。

 つまり、問題は、このようなコストを払ってまで中国を世界経済から締め出そうという試みを、是とするか否かだ。
 これは、確かに未来に対する戦略の1つとしてあり得るものだ。
 自由貿易の理念には反する。しかし、そうしても、中国の未来支配を阻止するのは意味があることなのかもしれない。

 ただし、グローバル社会からの中国の締め出しが、成功する保障もない。リーマンショックの時に、中国経済がダメになると思ったが、中国は4兆元経済対策(2008年11月)で切り抜けた。今回も、貿易戦争に耐え抜くかもしれない(もっとも、4兆元経済対策の後遺症は、いまでも中国に残っているが)。


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