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Suicaの運賃計算をサーバー化する流れはIoTのサーバー化と同じだ!

このSuicaの「センターサーバー方式」のニュース。これは僕が今取り組んでいるobnizというIoTシステムで進めてるIoTのサーバー化と同じ話だったので、これについて今回はまとめてみます。

https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho02.pdf

優れたSuicaのシステム


ピッってやるあのSuica。実はPayPayなんかと違って、カードに暗号化されたお金が入っていて、インターネットなんか無くても改札をスイスイ通れるとても優れたシステムになっていた。

世界にもなかなかない。もちろん背景にはとんでもない量を瞬時に裁かないといけないという理由がある。特に安定度は大事で、かざしてPayPayみたいにグルグルしてるのを新宿駅の改札でやってたら困るでしょ?だから駅の中にすべての運賃計算が高速にできる端末が置いてあって、それが計算している。いわゆるエッヂコンピューティングってやつ。

クレカみたいなのが一番簡単

実はこういう決済系のシステムで一番簡単なのはクレジットカードみたいなシステムで、

  • カードにID的なのだけ入ってる

  • 残高はサーバーに記録されている

  • 決済するときはIDを端末が収集してサーバーに情報が行くと残高から引かれる。

こうすると何がいいって端末側は難しいことをしなくて良くなる。カードにはIDしかなくてお金なんて入ってない。カードを読み取った改札機は「なんかこの人池袋から新宿に来たので、お金引いといてください、ゲート開けるけどいいですよね」という質問だけサーバーに流れば良くて、サーバーが「この人OKです、残高から引きました」と改札機に返事すればいい。そしたらゲートが開く。

このメリットは大きくて

  • カードの中にお金の情報が入っていると残高を増やすハッキングの対象になるが、それがない

  • 新しい駅が増えるごとに全国のコンピューターに新しい運賃計算の情報を配信しないといけないが、それが不要になる。(だって、計算するのは駅のコンピューターだが、知らない駅の運賃は計算できない。)

  • 「この時間だけ」とか「振替輸送」とかの変化に即時対応できる。

  • サーバー側で残高追加したり、その人を即時ブロックするなどの対応ができる

  • 端末は運賃計算しないので、運賃計算をさばける高性能なものじゃなくて、もっと安価なものでいい。場合によってはQRでもいいかも。

などなど、とにかく「柔軟性」が増える。
これはPayPayにできて今のSuicaにできないこと。

PayPayならキャッシュバックを突然はじめたりできるし、ヤバい人のアカウント停止もすぐできる。新しいお店がPayPay対応しても、他のお店のコンピューターのソフトを一斉に書き換えるなんて面倒なことしなくてもいい。

ただし条件がつく

「サーバーと通信できること」

もちろんJRの改札なんだから、とんでもない量の通信を即座にやらないといけない。今回のJRの仕組みは通信といってもまず間違いなくインターネットじゃない専用回線だろう。PayPayとかでたまに起きる障害みたいなことが起きたら大混乱になるだろうし、遅いと困る。みんながYoutube見始める時間帯で改札が遅くなるなんてとんでもない。いまネット掲示板を見てもこのニュースについてネガティブなことしか書いてない。素晴らしいシステムなのにって。

求められる柔軟性。IoTでも進むサーバー化

僕がobnizを開発して自分の会社で取り組んでいるのも全く同じ。この流れはIoTの全てに(というかITの全てに)起こると思ってる。
いかに端末で何もしないでサーバーに集約するか。SaaS化とも同じ。

特にIoTは今の世の中にあるのは今のSuicaと同じもので、PayPayみたいなものがない。

つまり
利用するセンサーやセンサー情報をどうするか、その判断などが端末側に作り込まれている状態

もちろんこのほうが仕組みとしては優れている。けど、実際それを運用してサービス展開していくとなると必ず変えないといけないことがでてくる

  • センサー追加や変更、構成の変更のたびに端末のソフトを更新しないといけない

  • データ処理のやり方の変更、「何時から何時は」や「雨だったら」といったものに柔軟な対応ができない

  • 何も変えなくてもセキュリティに問題がでたら更新が必要

これらをSuicaが全国の駅のコンピューターを更新するように、それぞれのIoT端末を変えないといけない。もちろん遠隔でできる仕組みがいるだろう。訪問してられないし。

ただ、それをやってでまで運用するIoTサービスというのはものすごく収益性があるものじゃないとまわらない。みんなSuicaと同じものを作って運用しないといけないということを分からずにはじめてしまう。

だから、IoTでは多くの企業で数台まではいいけど本格展開するときどうするのか決められずPoCで終わったり、広げてみたけど、サービス拡張できない・サポートコストが掛かりすぎて収益が上がらなくなる。

obnizで目指すのはPayPayみたいなサーバー化されたIoT

IoTで扱うようなセンサーデータなんて温度みたいなちょっとした数字が多くて、それをサーバーに送るような実は簡単なシステムが多い。ある値を超えたらメールを飛ばすみたいなね。

そういったことなら、もっとカジュアルな方法で始めるべきだと思う。

もちろんいまのPayPayじゃSuicaは代替できない。よく障害起こるし遅い。
それでも高い柔軟性があって、それでしかできないことがある。それにコストメリットがあって、とにかく敷居を下げてくれる。Suicaには読み取り機がいるけどPayPayはQRだけでいいように、難しいことは全部サーバー化して導入を安くできる。

そんなことがIoTには実は必要だったというケースが多いと思っていて、その市場はまだ世の中にはない。

僕は今、obnizでそれに取り組んでいて、Suicaや現金が担うものはそれはそれで、それとは別にPayPayがただの代替とは違い、より柔軟な支払いを実現して支払いの世界が変わったように、僕らもより柔軟なIoTでもっと世界が良くなればいいと思ってる。

JRのニュースは、僕が信じてる方向性と同じ方向性だったので、嬉しくて記事にしちゃいました。

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