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やっと人間になれたんだよ

# はじめてのインターネット

もう、昔すぎて思い出せないくらい昔。下の子が生まれて、義父母がなくなり、想定外の転勤になって、よくわからないくらいにいろんな「繋がり」がなくなって、わたしはふわふわしていた。ワンオペ育児だし友達いないし、義父母の家業の整理もしなきゃいけない。それで誰とも話せない日々で、ママ友もいないんでパソコン買って、インターネット繋いだ。そういう経緯だ。

インターネット? BBSって言ってなかったっけ? ニフティ? 最初は上手に仲間に入れずウロウロしてて記憶もあやふやだ。いくつかの掲示板に顔だすうちに知り合いができて、その知り合いたちといろんなSNSを移動しながら今も交流している。とりあえずSNS好きはどこまで行ってもSNS好きだ。とてもありがたい。

とりわけよく覚えているのは4人の女性で秘密の掲示板を作ったことだ。来し方行く末。不満に思うこと。生い立ちと、心の傷。そういう話ばかりずっとしていた。

とくに壮絶な過去があったとかではない。ごくふつうに成熟し、結婚したりしなかったりの4人組だった。それでもわたしたちには共通点があった。「うまく世間になじめず、今でいう厨二病みたいに、他人を嫌い、自分を傷つけるものを憎み、そして、結婚したり仕事してふつうに暮らしているのに、圧倒的に成功体験がなかったこと」だ。

「はじめて姉妹ができた」ってわたしたちは思った。住んでる場所も生活環境も全部違うのに、わたしたちはほんとに心の姉妹だったんだよ。

その中のひとりの女性がつきあっていた彼と結婚が決まったことがあった。転勤を機会に籍を入れ、一緒について行くのだという。

わたしたちは喜んだ。とてもとても喜んだ。彼女自身も静かに自分の気持ちを書いた。「いままで、どうして私生きているんだろう、もう、いつ死んでもいいのにって思いながら生きてたんだけど、やっと、生きててよかったって思えるようになりました」って。

そのとき、わたし、ディスプレイ読みながら声をあげて泣いたんだ。ほんとに、ほんとに、ディスプレイに向かって泣いたんだよ。彼女がいるのは、わたしにとってはその場所だから。

そのことも含めて、わたしたちは少しずつ成長していけたんだと思う。インターネットで書くことでちょっとばかり気持ちを沈める方法を覚え、そうやって世間の中を歩いていけるようになったんだよ。

「いつも楽しそうに仕事するね」って言われるほどのわたしですが、厨二病から人間になれたのは、実はインターネット以降のことなのです。




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