見出し画像

いま両側から見つめていること(邦題『青春の光と影』) 〜 "Both Sides Now" by Joni Mitchell 

Grammy Awards 2024 のショート動画が SNS で流れてきて、大きなソファに座って歌う Joni Mitchell の姿をしばらく無音のままで眺めていたら、Joni の背後でピアノを弾く Jacob Collier 君らしき姿が見えて、驚いて動画を観かえした。

Joni は アルバム "Joni Mitchell at Newport Live" でフォーク•アルバム賞を受賞したのだった。現在80歳。闘病中でもある。この日(そして受賞したライブ•アルバムの中でも)歌った "both sides now" がリリースされたのは1969年。私が生まれた年だ。澄んだ高い声で、シンプルなギターと共に弾き語られる若い頃のサウンド…(を聴けば、邦題が『青春の光と影』になった理由も、理解できなくはない… が、それはさておき)授賞式の映像の、現在の Joni がこの歌を歌い、語りかけることの説得力に、私は涙した。

Joni の音楽が、長いキャリアの中でさまざまに変遷してきたことは言うまでもなく、実際、私が彼女の音楽に触れたのも、大学時代のジャズ研の部室においてあった、ジャズ•ミュージシャンとの共作 CD を手にしたのが最初のきっかけだったように思う。様々なミュージシャンとコラボし、また愛され、多数のカバー曲がある。そんな Joni の、かつての曲の単なる "懐メロ"  ではない、老女となったいま改めて歌われる詞に、私の心は震えたのだった。

そんなわけで、【超•ゆき訳】を付してみた。日本語にすると押韻/rhyme が消えてしまうのが残念でならないけれど。


いま両側から見つめていること("Both Sides Now") 

天使の髪みたいに 流れたり まとまったり
アイスクリームのお城みたいに 空に浮かんで
羽毛の渓谷が そこかしこに
私は 雲を そんなふうに見ていた

でもいま 雲は ただ陽の光をさえぎるだけで
皆の上へ 雨を降らせ 雪を降らせ
私には たくさんのことが出来たはずなのに
雲は 私のまえを塞いだ 

雲のことをいま 私は両側から見つめている
上からと 下からと それでもなお なにかしら
私が思い出すのは 雲のまぼろし
そもそも雲って何なのか 私には ちっとも分からなくなる 


月の光 6月 そして観覧車
踊ってくらくらと目がまわる あの感じ
おとぎ話はどれも 現実になる
私は 愛を そんなふうに見ていた

でもいま 愛は ただ次の演目に移っただけで
笑ったままにして そこを立ち去る
もしも好きなら そのことは閉じ込めて
心の底を 見せることなく

愛のことをいま 私は両側から見つめている
与えることと 受け取ることと それでもなお なにかしら
私が思い出すのは 愛のまぼろし
そもそも愛って何なのか 私には ちっとも分からなくなる 


涙したり 恐れたり 誇らしく思ったり
「愛している」と声に出して言うことや
夢や 企みや ひとびとの大騒ぎや
私は 人生を そんなふうに見ていた

でもいま 昔からの友達は おかしなそぶりで
首を横に振って言う 「君が変わったんだよ」と
確かに、何かを失って そして何かを得たのかも
日々の暮らしのなかで

人生のことをいま 私は両側から見つめている
勝つことと 負けることと それでもなお なにかしら
私が思い出すのは 人生のまぼろし
そもそも人生って何なのか 私には ちっとも分からなくなる


そしてこちらは、69年のオリジナル•スタジオ録音。


よろしければサポートをお願いします。頂いたサポートは、活動費に使わせて頂きます◎