この愛売ります 〜 love for sale 〜

これもまたあのコール・ポーターが、1930年に初演されたブロードウエイ・ミュージカルのために書いた曲。タイトルからして、あまり好きな歌ではありませんでした。だって、ねぇ。そもそも、売ったり買ったりするようなものじゃ無いじゃないですか、愛って。それを "love for sale" だなんて。実際この曲は、公序良俗に反するとのことで、放送禁止になったりもしたそうです。ですが、だからこそ面白いとも言えるかもです。私が訳すならこんな感じ。以下【超•ゆき訳】です。

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この愛 売ります
食べたくなるよな 若々しい愛 売ります
フレッシュで まだ腐ってないやつ
ただちょっと 手垢のついたやつ
この愛 売ります

どなたが 買います?
どなたが 試しに 味わってみます?
お支払いを決めたのは どなた?
旅の行き先は パラダイス
この愛 売ります

詩人には 詩人の愛があって
彼らって 子供っぽいのよ
いろんなタイプの愛を わかっている私は
詩人たちより ずっといいわけ

スリリングな愛が 欲しいなら
あらゆる愛を 経てきた 私を
古いのから 新しいのまで
あらゆる愛、ただし 真実の愛、以外の

この愛 売ります
食べたくなるよな 若々しい愛 売ります
私の売りもの お買い上げなら
ついていらして 階段のうえへ
この愛 売ります
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日本の歌謡曲にも、かつて松坂慶子さんが歌ったこんな曲がありましたね。
これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛。(1979年「愛の水中花」より。作詞は五木寛之さん)

"love for sale" の歌詞をよく味わってみると「それは、ほんとうは愛ではない」ことを、実はこの歌の主は分かっている、そう気づきました。「every love "but" true love」というこの短いフレーズに、正直さと、ちょっとしたセンチメントを感じます。

"love for sale" って面白い歌なのかも?とやっと私が思えたのは、レディ・ガガとトニー・ベネットのデュエットを聴いてからです。もしかしたら、湿っぽくうらぶれた雰囲気になってしまうかもしれないこの曲を、ビッグバンドを従えた、パワフルなガガの意勢の良さと、トニーの老紳士たる上品さが、明るく粋な曲に仕上げています。

もうひとつ、カーメンのを。これはもう、ほんと素晴らしくて。なんだか「物売りの呼び声」みたいでもある歌い出し… グッときます。


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