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読書記録 静かな雨

読書記録 静かな雨
宮下奈都先生 著
文藝春秋 2016年

このところまた、小雨が降ったり、眩しい日差しが照りつける日があったり、季節の変わり目を感じさせますね。

みなさんは、雨が好きですか?

私は家にいる日は、窓ぎわから降る雨の中、濡れた木々の枝葉を眺めて、こんな日もあるよね、と思ったりしています。


さて、

今日は、図書館でみつけた、宮下奈都先生のデビュー作、文學界新人賞佳作。「静かな雨」を読んだ記録です。




◎あらすじ
主人公の行助は、20代。ある日、会社の社長から来月で社をたたむことを告げられ、呆然としながら家路に着く。

ふさぎがちな心で、電車を降りると、いい匂いがした。歩いていくと、パチンコ屋の駐輪場にたい焼き屋があるのを見つける。

思わず、行助はたい焼き屋の列に並び、熱々のたい焼きを買って食べる。

すると、ものすごくおいしい、たい焼きに驚き、
思わず、引き返し、たい焼き屋の主人に

「すごく、おいしいです。」

と、告げた。中から顔を出したのは、黒目がちな
行助より少し年上の女性、こよみだった。

それから、行助は毎日、たい焼きを買いに寄った。

ある時、こゆみから、コーヒーに誘われ、小さな店の中で、たんぽぽコーヒーを一緒に飲んだ。

しばらくすると、2人はランチを一緒に食べに行くようになる。

多くの言葉を交わすわけではないが、一緒にいて違和感がない、そんな2人だった。


ある時、転機が訪れる。こゆみが事故にあったのだ。

行助は、生まれつき麻痺のある足を、ひきながら、
毎日、市民病院に見舞いに行く。




◎気になった箇所
✴︎14ページ こゆみさんのことば
「あきらめを知ってる人ってすぐにわかるの。ずっとそういう人たちを見てきたから。あきらめるのってとても大事なことだと思う」

✴︎✴︎16ページ こゆみさんのことば
「でも、あきらめ方を間違えると、ぜんぶだめにしちゃうの。あきらめることに慣れて、支配されて、そこから戻ってこられなくなるのね。あたしのまわりにいた人たちも、今はもう、みんなばらばら。」

✴︎✴︎✴︎21ページ
バイオリニストの人が、難しいところを完璧に10回弾けるようになるのを話した、こゆみさん。

「たい焼きとじゃ比較にもならないけれど、
今まで何百、何千と焼いてきて、完全に思い通りに焼き上げるのが、どんなに難しいか身にしみてわかっているの。それで、毎朝10匹完璧に焼き上げることができたら、お店をあけることにしているんだ」




◎感想
✴︎
静かな雨というタイトルから、ひたひたと2人の気持ちが近づいていく様子、生きにくさはありつつ、
静かな日常を過ごしていく幸せ、それが心に沁みてくるようなお話でした。

✴︎✴︎
どんなことも、完璧にやろうとすると、準備や集中力が必要であれもこれもはできないけれど、
「今、これだけは、頑張りたい」
という物に出会えたら、とことん突き詰めてみると、何が別の世界が見えてくるかも知れないと思いました。

✴︎✴︎✴︎
私は以前 高山樗牛の

自分が立っている所を深く掘れ、
そこからきっと泉がわきでる。

と、いうことばが好きだったのを思い出しました。


私が今いるのは、、、。

まだまだ旅の途中です。



◎今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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