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読書記録 愛なき世界

読書記録 愛なき世界
三浦しをん 著、2018年 中央公論社



◎はじめに
 私は、新刊書はあまり読まない、読んでもすぐに記録は書かない、そんな風な傾向がある。少し落ち着いてから、自分で読んで感想をかきたいから。  


そして、私の世代とか価値観とか生き方が、反映されるから、一般的なみんなの感想とかかけ離れるかもしれないし、それはそれとして、おきたいから。



◎あらすじ
 本村は、大学院の博士課程で植物の研究をしている。両親とは離れて暮らす独り住まい。文字通り、家と研究室を往復する日々だ。

本村の研究はシロイヌナズナの葉の成長に関係する遺伝子についてだ。毎日、爪楊枝で小さな種を植え付けたり、それを観察し、遺伝子AHOの四重変異体を探している。

目標とする葉の形状を発見すると、丁寧に保存のプロセスを踏み、遺伝子の状態を顕微鏡で確認する。それを何千ものタネについて行う。

地道な作業の積み重ねだ。

そんな本村を温かい目で、見守る先輩や研究室の松田先生。彼等自身も実は植物について各々の研究テーマに基づき楽しみ時には悩みながら、研究していた。

そんな研究室のメンバーは、たまに温かくてどこか懐かしい、大学近くの円服亭のデリバリーランチをみんなで食べることになっている。

その円服亭に働いているのが、藤丸だった。

藤丸は年頃なのに、あまり身なりに構わずゴム草履をはき、葉っぱの研究をひたすら取り組む、本村のことが気になっていた。



◎気になった箇所 
(本村さんの心の声)
✴︎実験に筋書きなんてない。研究に期日なんてない。

うっかミスも含めて、目の前で起きている事象を先入観なくよく観察し、誠実かつ公正に事実を記録し続ける。失敗しても工夫を重ね、この世界の理(ことわり)ににじり寄りつづける。

自分の命が尽きる日まで、「どうして」と問いかけ、謎を追究しつづける、それが実験であり、研究なのだ。

✴︎✴︎
(研究室の松田先生のことば)下巻145ページ
実験で大切なのは、独創性と失敗を恐れないことです。失敗の先に思いがけない結果が待っているかもしれないのですから。

✴︎✴︎✴︎
(本村さんの心の声)
失敗したって、実験がうまくいかないときがあったって絶対に後悔だけはしないだろう。

諦めずに植物と触れあい、実験と研究をつづけていれば、きっとまたこういう喜びを味わえるだろうから。大好きで大好きで、、、。私は植物に恋をしているから。

◎感想
私は理系ではないので、細かなことは、わからない。しかし、以前STAP細胞の小保方晴子さんの書籍を読んだことがある。

日々、研究室にこもり、真摯に真理を突き止めようとして、複雑なプロセスからなる膨大な研究を継続していく過程を知るにつけ、胸が熱くなった。

この本の本村さんにも、同じような気持ちを抱いた。私たちの、目の前にある真実の向こうには、たゆまない努力の積み重ねがあったことを覚えていたい。

けれど、努力だけではなく、研究が行き詰まりもしかして、育ててきた植物の廃棄も考えたのだがそれはキッパリと「できない」と判断した本村は、植物への深い愛を抱いているなとも感じた。



ところで、私の好きなサーモンピンクの花を咲かせる、クリスマスローズ、今年は開花が遅いけど、いつ咲くのかしら。毎日見ているので、子どものように気にかけているのだけれど、、、。


◎最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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