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【詩】 迷い道

灰色の石畳の上を

黒猫が横目に躍り出た

どんぐり眼は時を選ばず光っているようで

右に左に揺ら揺らと

時々ミニャァと心細く鳴き

テッテとどこまでもついて来る


嬉しいとは素敵な響き

スタッカートが付くような

ころんっと仰向きに転がって

お腹を見てよと上目遣いの控えめさ

苦笑を引き出されしゃがみこんだら

パタンと左右を線対称にお腹を隠す

ビクビクしながら遊んでと

この間は一体愛しくて

触れないままでさて君と

どうやって遊びましょうか


好きという言葉の熱のグラデーションを

ついっと肉球が駆け抜ける

すっくとしたカラーの花の

くるりと巻いた花弁の先端を

小気味良く宙に泳がせるように


熱を持つにはまだ早い

時々立ち止まって

光のない小さな路地裏で

独り雨音を聞く

ジムノペディなんかを気取りながら

じっと晴れ間を待ちながら


雨上がりには

ケシの花がポツポツと咲く

いつの間にか庭に

茎を抱き込むような形の葉

颯爽と余韻を残しながら風に吹かれて

虎視眈々と涼しい顔で

いつかは庭いっぱいをその赤で埋め尽くす


ぷにゅっとしたその肉球で

ケシの花の実に触れてはダメよ

口に咥えたその花は

すぐに花びらを落としてしまったでしょう


出来ることなら抱き上げて

胸に寄せ

その悪戯な顎の下を

触れれば垂れるその耳を

どんぐりがアーモンドを過ぎて閉じるまで

撫でてやりたいのだけれど

教会の鐘が鳴ったら

モンスーンが吹き抜ける


小さな鈴を君にあげよう

気に入るかどうかわからないけど

尻尾の付け根に赤く結ぼうね

野山をまた駆け出したら

落としてしまうかもしれないけれど

ちっちゃな音はきっと記憶に残るでしょう

そして時々は思い出すでしょう

独りの星月夜なんかに

きっと

ふわっと


あたたかなご支援をありがとうございます❤ みなさんのお心に寄り添えるような詩を形にしてゆきたいと思っています。