見出し画像

東近江市長の子どもの権利無視のトンデモ発言 その2「ソーシャルアクションはじめました」

当たり前ですが一夜明けたら、さすがに大騒ぎになっていました。発言許すまじで発言の撤回と謝罪を求める声を抗議文として送ろう、署名を集めようというアクションが滋賀県の不登校の子どもを抱える親やフリースクール関係者から起こっています。その一方で、「困った市長やけど、あのような人はどこでもいるな」「かしこい大人は騒がずスルー」という、どこか他人事のソーシャルワーカーや教育関係者の声、そして未だに滋賀県知事や他の市町のトップの声が聞こえてこないことに、かなりの危機感を感じています。まして、国や他の自治体にとっては「滋賀県大変やね」という空気も残念ながらひしひしと感じています。本当に怖いことは、このトンデモ発言をする市長(まあ市長なりにはあの発言には信念があるのでしょう)よりも、スルーして何も言わないアクションしない社会のように思えます。

自分自身はソーシャルワーカーとしての倫理観でここまで活動を作ったり発信をしています。そのソーシャルワーカーにおいて倫理綱領の原理(社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重)は中核をなすことであり、今回の件についてもこのソーシャルワーカーの原理に従って、まず自らアクションを起こすしかないと決断しました。

とはいえ、すでにあちこちで様々なアクションが展開しているので、今、自分が行うことは、そのアクションのとりまとめと今後の方向性を示唆することかなと思って、この問題をきちんと社会に訴える場をつくることからはじめました。それが明日、10月20日に設定した滋賀県庁での「緊急記者会見」です。今、バラバラに当事者がアクションしようとしているので、この場に集約して、まずは社会に伝えるプロであるマスコミに声を届ける場を設定しました。そしてそれはトンデモ市長への断罪の場ではなく、この件を通して新たな対話やアクションにつながる場になるようにと動いています。

ということで昨夜から、その緊急記者会見の準備に追われて、なかなかコラムを書く余裕がありませんでした。さて今回からこの件の何が問題なのかをソーシャルワークの視点で指摘していきたいと思います。

トンデモ市長の個人的な思想や考えを否定するのは、正直難しいと思っていますが、まず間違いと思われることに基づいて発言している点が多くて、どうしても気になるので、そこを切口にしていきたいと思っています。で、その中でも特に気になってしょうがいないのがこちらの間違い。

東近江市にフリースクールを必要とする児童・生徒数は17人しかいない(ちなみに市内に小学校が22校、中学校が9校)という数字についての発言。実際には以下のように発言しています。

■会議での発言
「学校の支援室が生徒支援室ですね非常によく優秀な先生が集まってきています。本当におこったのはね、とんでもない話しもう精査した17人しかいないですね。本当にフリースクールが必要な子供を吟味したら17人しかいない。こういう現象が今起こってるんです」

■会議後の記者会見では
「義務教育は国民の三大義務。それをおろそかにして、甘やかすなというんだよ。国が間違っている」

 記者 ―― 教育機会確保法では公教育以外にも言及している。

「現場は色んなことをやっている。本当に真剣勝負でやってんだよ。それをもう、いろんな人が署名を持って来たりとか。厳命したの。実態を調べろ、って。調べたら17人だった」

 記者 ―― 300人中17人。

「そうだよ。そんな大げさなことで、根拠もなしに振り回されて。この国はとんでもない国にすでになってしまっている。文科省はもうちょっと現場を勉強しろって言いたい。あまりにも安易すぎる」

 記者 ―― 300人というのは、300人の署名のうちということか。

「違う。署名は3千か4千あった。向こうが言っている。300人近い子が困っているって書いてある。実態を調べてみたら、本当に手を差し伸べなきゃいけない生徒は17人だって」

いやいやいやいや、東近江市内でしょ。フリースクールを必要とする児童生徒数が17人なんて絶対にありえないですよ。17人って、うちのこどもソーシャルワークセンターに来ている不登校や不登校経験の若者の数とほぼ一致です。その程度の数です(うちは一軒家で活動している草の根のNPOです)。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとして東近江市の小中学校にも過去、あちこち行きましたが市内全体で17人という小さな数字はどうやっても出てこないです。「文科省はもうちょっと現場を勉強しろ」と言ってますが、まずはご自分がきちんと東近江市の学校現場の実態を勉強して欲しかったなと思ってしまいます。

となるとこの17人という数字はどこから出てきたのか。考えられることの一つが東近江市教育委員会が市長が期待している数字を忖度して出してきた。
これは今回の数字がどのようにカウントしたかを調べれば出てくることかと思っています。あと考えられるのが、違う数字を市長が間違って解釈して発言している。個人的にはこのトンデモ市長は、憲法の「義務教育」の意味を読み違えていたりしているので、この間違いは大いにありえることかなと思っています。どちらにせよ持論を公の場やマスコミに振りかざすにしても、根拠になる数字が間違っているのは、あまりにもお粗末すぎます。「そんな大げさなことで、根拠もなしに振り回されて」というあなたの発言そのままブーメランですよ。

※憲法の「義務教育」の読み違えは、10月18日の朝日新聞で立命館大学の春日井先生がコメントしているので引用しておきます。

【不登校問題に詳しい春日井敏之・立命館大大学院教授(臨床教育学)】  憲法の「義務教育」の条項も理解していない。義務教育は、国や自治体、保護者など大人に教育を受けさせる義務があり、子どもは教育を受ける権利の主体だ。

ということで、今回はこの発言を受けて、ソーシャルアクションをはじめた話とソーシャルワーカーとしては、トンデモ市長の思想や考えを変えることよりも、発言の根拠になっている数字や法律の言葉を取り間違えている点からきっちりと誤りを認めて訂正していって欲しいと思っています。次回はこの課題は「不登校への無理解」や「フリースクールなどの多様な学び批判」だけでなく「こどもの権利」を侵害していることについて解説したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?