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食文化と酒の好みは関係ある?

先日、リスボンの日本酒屋Sakemico(サケミコ)と、その日本酒の飲食店向け配達を担っている会社、Blackpeeer & Basilと共に、日本酒の試飲会を行った。それぞれ仕事を終えてから集まっての夜の試飲会だったので、私はそこで合わせる食事を提供。

今のところ、Sakemicoで提供している日本酒は、小さな蔵で作っているものが中心で、純米生原酒や生酛、山廃造り、水酛などの、味もちょっと個性があるものが多い。だから、日本酒をほぼ初めて飲む人にとったら好き嫌いが結構別れるかもしれない。

ただ、今までポルトガルで購入できるお酒が、すっきりした感じのものが多かったから、これはこれで、お酒の世界が広がっていいのかもしれない。

例えば、伯楽星は、こちらでもだいぶ前から手に入る、店でも人気があったお酒

今回の試飲会に来たBlackpepper & Basilのメンバーは全部で7名。彼らはすでに日本酒のことを勉強しているから、日本酒ならではの単語も色々知っている。それでも本当にすごいなぁと思うのは、日本語の勉強をしているわけではないのに、覚えなければならない日本語の単語がめちゃくちゃあって、それをちゃんと覚えて使っていること。例えば「生酛」「純米」「山廃」「生原酒」」無濾過」「杜氏」「吟醸」「大吟醸」などなど、日本人にとってもすんなり入ってこない単語だってあるはずなのに!

私の今までの店での経験と、彼らの話を合わせて考えると、こちらでも人気のお酒は、ちょっと綺麗めで上品で、酸も感じる鍋島吟醸や大吟醸みたいなお酒だ。でも、上級者になってくると、木下酒造の無濾過生原酒とか、どっしりした個性のあるものに入れ込む人もたくさんいる。

試飲会と勉強会の様子

彼らが言うには、日本人にとっては、水の味が全ての基本になるので、「水のようなお酒」というのは、すっきりしていて綺麗で飲みやすい、とてもいい意味で使われる。ただ、食事でもわかるように、こちらの人は、もっと味がしっかりしていて濃いものが好きで、どちらからというと、お米の味がしっかり感じるものの方が売りやすくて、ファンになる人が多いらしい。改めて聞くとこれって料理にも繋がって、面白いな!と思った。料理もやっぱり、日本で食べ慣れている味付けで出すと、ちょっと薄いな、と思う人が断然多くて、後から食べながら醤油をかけられたりしてしまうのだ。

逆に、最近流行っている、酸が強いお酒は、なかなか売るのが難しいそう。正直に言うと、日本からポルトガルに到着するまでに何ヶ月もかかっているから、この酸味が本来のものであるか、それとも本来はもっとマイルドなものなのか、わからない時もある。でもここに、甘さも加わり、ジュースのように甘酸っぱい系は、やっぱり日本と同様、こちらでも人気だ。

美しい青いボトルのデザインと、旨口系のこの帰山は、少々値段が張っても、試飲して買っていく人が多い。

今回の試飲会で、綺麗めのお酒から始めた時に、スタッフの中には、「うーん、これも美味しい。でももう私はこういう綺麗なお酒じゃ物足りなくなっちゃっているのよ!もっとガツンとくるやつが試したい!」と言う人もいて面白かった。

みんなの話を聞いていて感じたことは、やっぱり日本酒それぞれのテクニカルな製造法とか、味の特徴の話だけではなくて、それぞれの蔵のストーリーとか、そのお酒にまつわる話や写真や映像があると、こちらの人も親近感が湧いて、試しやすくなるのではないかな、ということ。そういう話を聞く前になんとなく飲む味と、聞いた後で飲んでみる味とでは、結構違うはず。だから、料理とのペアリングも含め、さらに勉強して、たくさんの人に楽しんでもらえる工夫を私なりにもしていきたいと思う!

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