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ヨーロッパの田舎で家を買う その1

今回は、料理から離れて、田舎暮らしの話

この10年くらいで、リスボンは随分と変わった。私が初めて来た約18年ほど前は、リスボンはポルトガルの首都とはいえ、まだまだど田舎で、道に鶏がいるのも見たし、旧市街地を歩いていたらカンフーの真似などをされてバカにされたこともあったし、展望台の絶景スポットも人はとても少なくて、独り占め状態で、テージョ川やリスボンの街を眺めながら、カフェのテラスで勉強やおしゃべりが気軽にできた。

私たちが店をオープンした時は、観光客がようやく増え始めそうな気配がしていたタイミング。そして、店があるダウンタウンのバイシャ地区は、特に観光客向けの店しかないので、ポルトガル人が進んで食事に行くエリアでもなかった。

それから数年経つうちに、あれよあれよと観光客は爆発的に増えて、それだけでなく、バイシャ地区に、有名なシェフのレストランがオープンしたり、ポルトガルの飲食業界で話題になる新しい料理の店ができたり、ものすごい勢いで変化していった

例えば、バイシャ地区にできた、注目のレストラン、Prado と、ポルトガルの自然派ワインが買えるカフェ、ショップ Prado Merceariaがある。ここのオーナーさんたちとは、お互いに店を行き来する仲だった。

お店としては、お客さんの数も必然的に増えるので、とてもありがたいことだったけど、私たちはリスボンの、ちょっとひなびた田舎の感じがとても好きだったので、毎日の通勤で、トゥクトゥクが忙しなく行き交う道や観光客を避けながら歩かなければならなかったり、騒音や音楽で賑やかな場所にいつもいることが、ちょっとしんどくなってきたのだ。

そして、

今から5年前の2017年に、私たちは、週末や休暇を過ごせる、田舎の家を探し始めた。


田舎で探すと言っても、どこのエリアを探せば良いのか、ポルトガルの地方にそこまで馴染みがなかった私たちは、色々条件を考えて、休みの度に、車で様々な場所を訪れてみた。

条件
・リスボンから車で1時間以内くらいの場所であること
・海がある、または緑が豊かな場所であること
・一軒家であること
・予算内であること


一時は、店自体を田舎に移転しようかと考えたこともあったけど、集客を考えたら、まだまだそれは難しいだろう。

「ここは海もあって、村もこじんまりしていて可愛らしいけど、なんだか空気が重い感じがするね」

「ここは海が穏やかでとてもいいけど、ちょっとリスボンからは遠いかな」

「場所は最高だけど、ここはお金持ちしか手が届かないね。。」

などと言いながら、なかなかここ!という場所を見つけられず数ヶ月過ぎた時に、いつものようにネットで家を探していたら、たまたま、とてもいい感じの古い家が出ていた。リスボンからそう遠くない場所で、海の近くで、湖もそばにある。そして、何よりも、値段が破格だった!

場所は、前からずっといいなぁと話していたセジンブラという地方。リスボンからテージョ川を渡って、少し南へ向かったところにある半島のような場所で、海に囲まれている。セジンブラの街は漁港で、ここで新鮮な魚も手に入るし、海も湾になっているのでとても穏やかで、夏にはヨーロッパの各地からバカンスに訪れる人たちもいる、小さなリゾート地みたいな場所だけど、まだまだそこまで観光化はしていない。隣にはアラビダ山脈という、国立公園にもなっている緑豊かな山もある。とにかく自然がいっぱいで海もあって山もある、いい空気が流れている場所で、ここはいいなぁと思っていたけど、ちょっとリスボンからは遠いかなあと思っていた。

湾になっている、穏やかで美しいセジンブラのビーチ。リスボンからは車で1時間ほど。


でも、私たちが見つけたその家は、セジンブラよりももっとリスボン寄りの、海の近くにあって、隣には、ミュージックフェスなどで毎年人が押し寄せる有名なビーチなんかもある場所にあった。こんなところがあったんだ!

すぐに電話をして、内見させてもらった。
すぐ隣に海と隣接して湖もある。実は、その湖が、私たちがこの家を買うことにした決め手だった。隣接している、ちょっと荒々しい波の海とは裏腹に、湖は水が温かく、遠浅で、カヌーやウィンドサーフィンを楽しむ人たちがいる。夕方になると、太陽の光の反射で黄金色に輝くその湖は、その日によっては、この世のものとは思えない美しさだった。こんなに美しい場所に歩いて行けるなんて、素晴らしい!

セジンブラ中心地は上の写真のビーチがあるところで、ちょっとした観光リゾート地。


夕暮れの湖
愛犬のみかんも気に入ったみたい

早速内見させてもらった家のある地域は、一応区画整理がされている地域で、家がまばらに建っている。私たちが見に行った家もその一つで、なんでももう30年くらい誰も住んでいないらしい。持ち主は70代くらいの女性で、リスボンに住んでいる上に車もないから、行くことはほとんどなかったようだ。

入り口には見事なブーゲンビリアが。

土地自体は500平米くらいあって広いけど、家は小さめで、中は、その昔この家を建てた持ち主のおじいさん(持ち主だった女性のお父さん)が住んでいた時のまま、家具や本などがそのまま残っている。昔のポルトガルの家らしく、所狭しと壁で部屋が区切られていて、キッチンはないに等しかった。庭には大きな松の木が、この家のシンボルのようにドーンとそびえている。その隣にいちじくの木があって、家の裏にはリンゴの木が並んでいる。

キッチンと呼んでいいのかわからないスペース。どうやって料理していたのかは謎。
家具はそのままの状態
2階のベランダから見た庭。草は伸び放題。


家の中は、改装が必須だけれども、この家のある環境や、こじんまりした佇まいなどがとても良い感じで、リスボンからも車で40分であること、そして緑が溢れる地域ということもあって、私たちはこの家を購入することに即決した!

長くなったので、次回へ続く。


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