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[weryfikacja 検証51~65] ”ossiaとして” ではない - ノクターン第2版

監修者の先生によって「ossia と」が「ossia として」に変更され、出版。

51.
演奏に関する解説
楽譜に関する注意(各巻共通部分)

2020年2月の締切時に訳者5名が原稿を提出した際、この各巻共通部分「楽譜に関する注意」で  ossia「として」と訳した人はひとりもいませんでした。 原文からそのまま訳せば ossia「として」にはなりません。

英訳ではどのようになっているでしょうか。

この部分の英訳は(上の画像のように)何種類もあり、巻によって違います。もしかすると監修者の先生は  as  にとらわれていらっしゃるのかもしれませんが、 ossia「として」という訳は原文とは違う。これは「ossiaとして」という意味ではありません。

「こう弾くこともできるよ」という“別の可能性”がヴァリアントです(「異稿」と言ってよい場合とそうでない場合があります)。 ossia「として」という訳ではなぜいけないのか。

ossia「として」という訳がおかしいのは、 ossiaという表示があるヴァリアントも、表示のないヴァリアントも 実際どちらも「ossia (こう弾くこともできる)として」ということに 変わりはないからです。 原文の意味は ossia 「として」ではない。ossia と「記された」「表示された」と書かれているのです。

ヴァリアントの種類を示すために、ossia の表示のあるものとないものに分けているに過ぎない。どちらも「ossia として」です。ヴァリアント(別の可能性)なのですから。

原文をそのまま素直に理解できていれば ossia「として」という訳にはなりません(翻訳メンバーのうち、この共通部分の文で「として」と訳した人はいない)。 監修者の先生は、原文を理解しないまま (全巻とも)正しくない訳にして世に出してしまっている。ノクターンだけでなく全巻を直す必要があります。

ノクターン第2版では「ossiaとして」という不適切な訳が10か所以上見られます。 弾く上ではとくに困らないでしょう。しかし読んだ人は「ossiaという表示がなくても、ヴァリアントなのだから当然『ossiaとして(こう弾くこともできますよと)示し』ているのに、おかしいな」と思います。

52.
演奏に関する解説
楽譜に関する注意(各巻共通部分)

第1版・第2版ともに適切ではありません。第1版の[訳注](実際は監修者注)は不要。

それだけでなく、「w ten sposób/こう/このように」を勝手に省いてしまっている 。「文章的に、なくても同じように読めます。」という担当者の方のお考えは誤りです。なぜなら、省いてしまったことで「ossiaと書かれた」ことを指すのか「ヴァリアントが書かれた」ことを指すのか、まるでわからなくなってしまっているからです。省いてはいけない。

監修者の先生はこの省略を認めてはいけないのに、ポーランド語の原文をお読みになれないため 正しい判断ができない。つまり“監修”できていない。

担当者の方が校正の段階でこのような “勘違い” をなさることは当然起こり得ます。何も恥ずかしいことではない。しかし(原文の意味が通じなくなるため)当然 訳者が受け入れなかった(2021年3月)この省略を、(2020年3月~2021年6月の“監修”期間の後)原稿最終提出(2021月6月14日)後に何も知らせず勝手に強行し、そのまま出版するのはあり得ません。大変な迷惑を被るのは楽譜を買ってくださる方々なのです。正しくないのですから。

第2版でももちろん「として」という訳は適切ではありません。「w ten sposób oznaczone このように/こう(= ossiaと)記された」、つまり原文は ossiaと記された/書かれたことを言っているのに、この訳では「書かれた」のはヴァリアントだということになってしまっている。違います。これは正しい意味ではない。

「書かれた」のは ショパンが ossia と記していることを言っているのです。(ショパンが自分で ossia と書いたのは1度だけ、出版には出さなかった変イ長調のワルツにおいてです。Special thanks: カミンスキ先生)

素直にそのまま訳すべきです。

53.
原資料に関する解説
ノクターン ヘ長調 作品15の1, 第27,29,39,41小節(右手)

原文は「ossiaとして」という意味ではない。
「 ヴァリアント ossia は 」「ossiaと記された/表示されたヴァリアントは」 です。

54.
原資料に関する解説
ノクターン 嬰ヘ長調 作品15の2, 第8小節(右手)

55.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第1小節(左手)

56.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第21小節(右手)

57.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第28および30小節(右手)

58.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第38小節(右手)

(1999年当時、WnT は原資料の一覧に入っていなかった。)

59.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第59~60小節(左手)

60.
原資料に関する解説
ノクターン 変イ長調 作品32の2, 第1小節(右手)

61.
原資料に関する解説
ノクターン 嬰ヘ短調 作品48の2, 第113小節(右手)

62.
原資料に関する解説
ノクターン 変ホ長調 作品55の2, 第35小節(右手)

63.
原資料に関する解説
ノクターン ロ長調 作品62の1, 第70小節(右手)

64.
原資料に関する解説
ノクターン ロ長調 作品62の1, 第72および74小節(右手)

65.
脚注
ノクターン ヘ長調 作品15の1, 第27,29,39,41小節(右手)

「ossiaとして示したヴァリアント」という訳は「ossiaと記されたヴァリアント」と一見同じように思えるかもしれませんが、違います。

ossiaという表示があってもなくても「ossia (こう弾くこともできますよ)として」ということに変わりはない。ヴァリアントであれば「ossiaとして」私たちは弾くことができます。ここでは「ossiaと表示」されているかいないかを言っているのです。

ossiaと書かれている(with ossia)場合と
書かれていない(without ossia)場合があることを言っている。
どちらも「 ossiaとして」であることに変わりはない。

原文は「ossiaとして」ではなく、

・ossiaと記された/書かれた/表示されたヴァリアントは
・ヴァリアント ossia は

と書かれています。ossia と表示されていないヴァリアントも、ossia 「として」です。全音第2版の訳は原文の意味を正しく伝えていない。つまり読者が正しく理解することが難しい。原文が言っていることはごくシンプルなのです。

Special thanks: ◯◯◯◯先生(音楽学者)






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