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【仕事】言語化しにくいものこそ強みになる(木下斉さん・中川淳さん講演感想)♯017

これからの時代の強みになる「ハイコンテクスト」な魅力とは?


先日、奈良で開催されたこちらのイベントに行ってきました。
中川政七商店主催のイベント『奈良にいい会社をつくろうサミット2023』。

この基調講演は、毎朝愛聴しているvoicyパーソナリティ、まちづくりの専門家の木下斉さん。「生木下節が聞きたい!」そして「中川政七商店の中川淳さんの話、聞きたい!」とはるばる京都から参加して参りました。

改めて感じたことは
歴史という強みがあり、なおかつ生産年齢人口の減少という供給制約の局面を迎えている日本で、ブランディングに取り組む必要性です。

まず、ご存じの通り、日本は生産年齢人口が減っていて、人手をかけて成り立つ事業モデルでは、立ち行かなくなってきています。例えば、私が住んでいる京都でも、コロナ後、観光客が回復し、需要はあるのに人手不足で客室がすべてあけられないという宿の話はよく聞きます。
だからこそ、人手をかけることなく、付加価値で勝負ができるものに、資本を集中させ、稼ぐといった事業モデルが求められています。
以前、木下さんのvoicyでは二次産業のように原価ベースで売値を決めるのではなく、まずいくらで売りたいかを決めて、そこに付加価値をつけていくといった話もされていました。

では、どういったものが高付加価値になるのか。
その一つに、ハイコンテクストなものなかなか言語化できないもの)に価値があるとのこと。

例えば、奈良の観光素材を例にとると、大仏や鹿はローコンテクスト。まさしく奈良のアイコンであり、非常にわかりやすい。
一方で、実際に体験しないとわからない、その土地の歴史や文化、雰囲気、また職人のこだわりなんかは、ハイコンテクストなものとして分類されます。

当日、「奈良の観光はローコンテクスト、ハイコンテクストどちらの方向に進むべきか?」といった議論もありましたが、ローコンテクストなものは簡単にマネができてしまう。京都との差別化も打ち出しにくい
何なら新興国でも真似ができてしまうし、どこにでもあるものになってしまうので価値がない。イコールわざわざお金を払う気にならない。
ローコンテクストなもので成功したとしても、安い分、規模で勝負しないといけなくなるので、消耗戦になる。オーバーツーリズム問題なんかはその最たる例。
京都よりも更に古い、古代から続く文化や歴史、宗教が集まっている奈良だからこそ、ハイコンテクストなもので勝負できるポテンシャルがあるという話もなされていました。

これって製造業でも言えること。鉄道会社でもやっていた。

一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生の『知識創造企業』を思い出し、これは、観光業だけに当てはまる話ではないと思いました。

簡潔にまとめると、この本の内容は、個々の思い、ノウハウ、感覚といった暗黙知を形式知化させ、商品、サービスに反映させるマネジメントに日本の企業は長けているといった話です。
以下のサイトにも掲載されているように、製造業でもハイコンテクストな「価値」を商品づくりに反映しています。

また、私がおもしろいと思う企業は、自動車メーカーのマツダで「感性」の可視化に取組んでいます。


私は、以前勤めていた鉄道会社で、組織風土を変えるプロジェクトに携わっていました。
「システム」「設備」「お得なきっぷ」なんかはお金をかければ、どこの企業でも代替可能。それでも「ここの会社がいい!」とお客様に信頼していただき、選んでもらうためには、自分たちの行動の積み重ねで「安心感」「心地よさ」などと言ったハイコンテクストな価値を提供できるかだと、伝えていました。また、その一環で、お客様の期待や社員の誇りといったあいまいなものを、対話を重ねながら言語化し、それをビジョンや行動指針にまとめ、浸透させるプロジェクトにも関わっていました。

一方、うちの家業でいうと・・・

このように、世の中的にはずいぶん前から「ハイコンテクストなものが価値を生む」といったことが言われているにもかかわらず、家業に立ち返って振り返ってみると・・・
やれ利回りがどうか、やれ儲けがどうか、やれ規模はどうか
と数字で見えるものにしか価値を置かない昭和の父と対峙しなければなりません。
最近は、これも「世代間ギャップだな」と自分を納得させられるようになりましたが、家業の不動産業でも付加価値とは何かに向き合っていく必要があります。

つまり、築年数は古いけれど、立地はそこそこ。それなりの値段で、必要最低限の設備がついているだけといった物件では、人口減で住宅の供給過剰の局面を迎えるなかで、今はなんとかやれていても将来戦えないことは目に見えています。
父は、「利回りの良さで早期に投資回収できるからそれでいい」と言っていますが、事業として継続させるなら、そんな単純な話ではやっていけないだろうと。

中心となる事業エリアは、京都。
京都の歴史や文化を活かした"ハイコンテクスト"な魅力をいくらでも活かせるだろうと思うのですが、以前、父は西陣という織物の町にあった実家の京町家を潰して、どこにでもあるような賃貸マンションを建てたりするので、本当に目も当てられません。

以前、イギリスで100年以上前の外観の、実に味わいある家に住んでいました。窓から見えるレンガや木々の風景までも、歴史を感じられてとても気に入っていました。新築物件のように「こんな最新設備がついてて・・・」みたいなわかりやすい説明はできませんが、古さのなかにこそ豊かさがあると体感しました。
日本の不動産業界でもスクラップ&ビルドの新しければなんでもよいといった価値観ではなく「歴史を重ねているもの」に価値を見出せるとなるようにならないと、いつの間にかどこにでもある景観ばかりがどこの町にもできてしまいます。
このような状況に異を唱える事業者さんも増えてきていますが、我が家のような小さな会社でも、土地に根付く不動産事業者として、事業を通じてその町の魅力、建物の魅力を世に伝え、歴史や文化を守るのが使命とも思うのです。


ということで、このイベントは、自分の会社のハイコンテクストな付加価値とは何かを改めて見直せた機会でした。
最近の木下斉さんのvoicyでも、この日お話されていた内容は触れておられるので、ご興味がある方はぜひ。


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